ライフ

健康診断が「病人を生む」カラクリとは?実は“基準値”は頻繁に変わっている

「過剰診断」や「過剰治療」が生み出されている問題

[健康診断]の罠

画像はイメージです

 そして当然、基準値が厳しくなれば、新たに“病人”と認定される人が増える。厳格化された基準値によって、「過剰診断」や「過剰治療」が生み出されている問題があるのだ。  例えば、前立腺がんを早期発見するPSA検査がよく話題に上る。この検査ではがん以外のケースも引っかかることが多いにもかかわらず、陽性判定されると、精密検査では股間に針を突き刺す、あまり受けたくない検査が行われる。受けた人には「地獄だった」と話す人もいるほどだ。  しかし、再検査の結果、何らがんでないとわかるケースは思いのほか多い。つまりこのPSA検査そのものが、偽陽性を多く検出する傾向があり、「過剰治療」を生む温床となっているのだ。実際、米国のガイドラインでは、前立腺がんを健康診断として行う場合には、やってもいいが、受ける人に対してデメリットも必ず説明すべきと明記している。

過剰な検査が行われる理由

 では、なぜ過剰な検査が行われてしまうのか。その理由は2つある。一つは、医療機関の収入に繫がるからだ。病気が見つかるほど病院は儲かる。そのため、病気を見つけたいと、必要以上に行動する可能性があるということだ。  もう一つは、医療関係者のリスク回避。見逃すと後で訴えられるかもしれないので「念のために検査しておきましょう」と言いがちになる。  受ける側も「念のために受けておこう」と思うが、それはムダな検査に自ら足を突っ込んでいる可能性がある。この健康診断の“基本”を踏まえ、次回は「本当に必要か?」と疑ってもらいたい。 【医療ジャーナリスト 室井一辰氏】 医学専門メディアや週刊誌などで病院や診療所に関する記事を執筆。欧米のバイオ研究の現場も取材。近著に『世界の医療標準からみた 受けてもムダな検査 してはいけない手術』(洋泉社) 取材・文・撮影/週刊SPA!編集部 モデル/立岡稔生
1
2
おすすめ記事