更新日:2023年10月27日 11:30
ライフ

完璧主義のアナウンサーが発声障害に…「噛んでも命を取られるわけではない」と思えるようになるまで

発声障害は“死ぬ病気”ではないものの…

 思いとどまったあと、山田氏は同じような症状に悩む人たちの存在を知る。2年近く経ったのち、一般社団法人SDCP発声障害患者会(代表理事:田中美穂氏、以下患者会)に繋がることができた。SDCPはそれぞれ、Spasmodic Dysphonia Cheering Party の頭文字を表し、“発声障害(Spasmodic Dysphonia)を抱える人たちの応援団(Cheering Party)”という意味になる。 「お恥ずかしい話ですが、発声障害の存在を知ってから患者会に繋がるまで時間を要したのは、自分が病人であるという現実に向き合えなかった自らの弱さだと思います。  学生時代の大半をバスケットボールに打ち込んできた私は、本当の意味で病気の深刻さを知らずに生きてきました。この病気は死ぬことはないものの、自分らしさを奪われて、死ぬほど悩む病気だと思います。  患者会が主催する総会に参加したとき、皆さんが暖かく迎えてくれて、率直に“優しい人たちだな”と感じました。自分が痛みを感じているから、他の人にも優しい気持ちで接することができるのではないでしょうか」

「ベートーベンは耳が聞こえなくても音楽をやり続けた」

山田祐也氏

視聴者からの温かいメッセージに励まされた

 山田氏は自らの発声障害について、2022年11月に放送されたあいテレビ番組内で告白した。当時の反響をこう振り返る。 「日頃から、地元のショッピングモールなどで声をかけていただくことはありましたが、SNSのアカウントにさままざまな励ましのコメントを頂戴しました。私は当初、『もうアナウンサーを辞めろ』という類の厳しいご意見も覚悟していましたが、メッセージの多くは暖かいものでした。 『(発声障害の患者さんからのメッセージ)勇気を出していただいたことに感謝します』『私には想像もつきませんが、頑張っている姿はかっこいいし、アナウンサーらしい聞き取りやすい声で好きです』というものが届きました。個人的に印象に残ったのは、『ベートーベンは耳が聞こえなくても音楽をやり続けましたから大丈夫』というメッセージです。  その後、『news23』(TBSテレビ)にも出演させていただき、発声障害当事者としてお話をさせていただくと、全国からさらに多くの励ましをいただきました」
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「噛んでも命を取られるわけではない」と思う境地に
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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