更新日:2024年04月24日 14:15
ライフ

差別され逃げ場もない“弱者男性”になってしまうのは、本当に「自己責任」なのか?

“騙される男が悪い”頂き女子・りりちゃんに対する世間の反応

 今年、弱者男性に対する差別意識があらわになった事件があった。「頂き女子・りりちゃん」の逮捕である。頂き女子とは、男性と体の関係を結ぶことなく恋愛感情を煽りカネをせしめる女性のことだ。その代表格である“りりちゃん”は、奨学金、親に背負わされた借金など、噓をついて「おぢ(おじさん)」からカネをいかに詐取するかを指南し、詐欺ほう助の罪で捕まった。  ところが、ネットでは加害者のりりちゃんを援護する声や「騙される野郎も悪い」「おぢは安楽死させたらいい」など、被害男性に対する差別的な言動が飛び交った。そこにはあからさまに、弱者男性への差別意識が見て取れた。これが男女逆だったら、女性はもっと同情されるのではないか?というのが、弱者男性論の起点である。

逃げ場のない男性。行政の対応も消極的

 ある男性が、私に相談してくれたことがある。彼は、妻からのDVに悩まされていた。妻は彼がゴミ出しを忘れたなどのささいなミスをあげつらっては、毎晩2時間も彼に説教した。独身時代にお金を貯めて買ったオーディオは、水をぶっかけられて壊された。そんな日々が続いたある日、彼は職場で涙が止まらなくなり、私に電話をくれたのだ。 弱者男性パンデミック 私はすぐに精神科へ同伴した。彼には適応障害の診断が下り、ホテルや友人の家、実家で避難生活を送った。ところが、当時は男性のDV被害者を守れるシェルターや相談窓口が見つからなかった。DVは「女性だけが受けるもの」とされていたからだ。彼は行政へ相談したが「あなたに紹介できる団体はない」と言われてしまったのである。  彼はラッキーなことに、相談できる友人や実家の両親がいた。だが、もし逃げるお金が不足していたら、ご両親が故人だったら、友人が少なかったら……彼に逃げ場はなかったかもしれない。  こうした議論が始まって8年。男性の貧困や過労死、犯罪被害については、ようやく触れられる機会が増えてきた。’23年に男性のレイプ被害が不同意性交等罪で裁かれるようになったニュースを見て「ついに男性も“かわいそうランキング”に入った」と感慨深くなったものだ。
次のページ
連帯できない弱者男性たち。なぜいがみ合うのか
1
2
3
ライター、経営者。主にキャリアや恋愛について執筆。5000人以上の悩み相談を聞き、弱者男性に関しても記事を寄稿。著書に『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)『ハピネスエンディング株式会社』(小学館)。X:@10anj10

弱者男性1500万人時代 (扶桑社新書)『弱者男性1500万人時代』 (扶桑社新書)

データで読み解く“弱者男性国家”ニッポンの現在


記事一覧へ
おすすめ記事