更新日:2024年04月24日 14:15
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差別され逃げ場もない“弱者男性”になってしまうのは、本当に「自己責任」なのか?

 近年、SNSを賑わせている、生きづらさを抱える男たちを指す「弱者男性」という言葉。物価が上がり続け深刻化する貧困問題に加え、「カネを稼いでさえいれば強い」という価値観が痛々しくなってきた今、男の生き方に明確なゴールがなくなるとともに、定義が広がりトレンド化している。  悩める男たちが向かうのは、受難か、福音か――? 弱者男性の現状に詳しいライター・トイアンナが迫る。

本当に「貧困は自己責任」か?

弱者男性パンデミック

写真はイメージです (以下同)

 あなたは「キモくてカネのないおっさん」という言葉を聞いたことがあるだろうか。  貧困女性や子供と比較して、支援を後回しにされやすいグループを指すこの言葉は、’15年にネット論客の一柳良悟が生んだものである。言葉はそのキャッチーさからあっという間に広まり、略して「キモカネ」と呼ばれるほど一般化した。そして、キモカネをよりメディアでも言いやすい形に変えた「弱者男性」という言葉が生まれ、今に至る。  男性は貧しかったり、過労死に追い込まれたりしても「自己責任」として片付けられがちだ。この文章を読んでいる男性も、お金を稼げないのは努力不足だと考える人が多いのではないだろうか。  もし自分が「稼いでいる側」だったら、質問させてほしい。あなたの親は大卒だっただろうか。両親が大卒だったグループと、高卒以下だったグループに分けたとき、高卒以下の親から育った人の貧困率は大卒グループの約3倍である。親の学歴は自分で選べないが、これでも「貧困は自己責任」だろうか。

ルックスの良し悪しで年収も結婚も決まる

 ’20年の国勢調査では、男性の生涯未婚率は28%。それに対して「いずれ結婚するつもり」と答えた若年男性は86%もいる。この隙間でこぼれ落ちる、結婚したくてもできない14%の“モテない”男性も、すべて自己責任なのだろうか。特に男性の場合、年収が高ければ高いほど結婚できる確率が上がる。つまり、親の学歴が自分の年収や、結婚にも関わる。これをすべて「自分のせい」と片付けてよいだろうか? 弱者男性パンデミック キモさも自己責任とは言い切れない。米国の調査では、容姿の良し悪しで男性の生涯所得は3400万円ほど違う。  このように、キモくてカネがないことは、自分のせいだけではないにもかかわらず、弱者男性は蔑ろにされやすい。この現象を、ネット論客の御田寺圭は「かわいそうランキング」と呼ぶ。弱者男性は女性と比べ、かわいそうだと思われにくい。男性は元来、強者だという前提があるからだ。
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弱者男性がざわついた事件
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ライター、経営者。主にキャリアや恋愛について執筆。5000人以上の悩み相談を聞き、弱者男性に関しても記事を寄稿。著書に『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)『ハピネスエンディング株式会社』(小学館)。X:@10anj10

弱者男性1500万人時代 (扶桑社新書)『弱者男性1500万人時代』 (扶桑社新書)

データで読み解く“弱者男性国家”ニッポンの現在


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