“頂き女子”りりちゃんを援護する声。なぜ被害に遭った“おぢ”が非難されるのか
4月22日に“頂き女子りりちゃん”こと、渡辺真衣被告(25)に対し、懲役9年、罰金800万円の判決がくだされた。りりちゃんは、恋愛感情を利用して男性たちから1.5億円以上の金額をだまし取ったなどの罪に問われていた。
りりちゃんの手口は、まず相手と親密な関係を作ってから「実は……」とお金に困っている様子を見せ、現金を振り込ませてから自然消滅を図るという、コテコテのロマンス詐欺である。2000年代には国際結婚をちらつかせて信頼関係を築いてから、「急にお金が必要になった」と嘘をついてお金を巻き上げる手口が流行した。アメリカでは全詐欺のうち、1割がロマンス詐欺になってしまった時期まである。
つまり、“頂き”は、誰もが知る詐欺の手口だった。にもかかわらず、ネットではりりちゃんを擁護する声が、次々と生まれたのだ。(文/トイアンナ)
文筆家、プレジャーグッズストアの経営者である北原みのりさんは、りりちゃんの実刑について強く抗議している。
「報道によればりりちゃんは、家庭に居場所がなく、10代を歌舞伎町で過ごす女の子だった。歌舞伎町にたむろする女の子たちの多くがそうであるように、ホストにはまり、ホストクラブでのお金を捻出するために性産業で働いていたという。そういう意味でりりちゃんは、若い女性を搾取する街に丸ごと飲まれてしまった子どもであり、生きのびる手段は自分がされてきたように誰かを搾取することでしかなかったのかもしれない」( AERAdot.より)
北原さんの言うように、同情すべき経緯や背景はあったかもしれないが、詐欺がれっきとした犯罪であることに変わりはない。
再度書くが、頂き女子りりちゃんこと、渡辺真衣被告は25歳の成人である。
さらに過激な投稿もXでは見られた。「被害者の方が悪い」という声である。
“おっさんが無償で若い女と楽しめると思ってる方が犯罪なのでは”
“好きで貢いだおっさんが被害者ぶってんのはどうなの?”
など、Xにはあまりにも二次加害と見られる投稿が飛び交い、読むのがつらくなるほどだった。
この世には20歳以上の年の差がありながらも恋愛・結婚関係にあるカップルはいる。合法であり、おかしくもない。珍しいだけである。
さらに、「貢いだおっさん」は被害者である。なぜなら、女性客がホストに貢ぐ場合と異なり、頂き女子りりちゃんは嘘をついてお金を集めていたからだ。ホストが「俺、この店で月間1位になりたいんだよね。でもそれには400万円足りなくて」というのは、嘘ではない。そのために必死になって400万円を貢いでからホストに捨てられたとしたら、気の毒ではあるし、このようなホストクラブの営業形態が見直されるべきという議論も当然あるだろうが、詐欺ではない。
だが、頂き女子りりちゃんが販売していた詐欺マニュアルには、明らかに「お金を引き出すための嘘」をつくよう書かれていた。
しかも、りりちゃんはキャバクラ嬢として、擬似的な恋愛関係が約束された場で客にこの話をしたのではない。マッチングアプリで出会った相手に「やみえい」(病んで心配させること)と称して、嘘をついた。つまり、ホストと客の会話とは、前提が異なるのだ。
であるにもかかわらず、なぜ「りりちゃんは悪くない」論が出てくるのか。その背景には、被害にあった男性の弱者性がある。
次々と投稿される「頂き女子りりちゃん」を擁護する声
ホストへ貢ぐ行為と、頂き女子りりちゃんの詐欺の大きな違い
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ライター、経営者。主にキャリアや恋愛について執筆。5000人以上の悩み相談を聞き、弱者男性に関しても記事を寄稿。著書に『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)、『ハピネスエンディング株式会社』(小学館)。X:@10anj10
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