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「男なんだから母親を助けるのは当然」生活保護で暮らす30歳の首を絞めた“男らしさの呪縛”。幼少期から虐待されていたのに

弱みを見せた女性は助けられるが、男はナメられる

 この連載に先駆けて、筆者はみさこさん以外の男性からも話を聞いている。別途、お話を伺ったサライさん(仮名)も男らしさについてこう語る。 「男性は、つらいことがあっても友達にすら相談しづらいですね。相当関係が進んでいないと、弱みを話しても“何なの、この人”ってなってしまう。その点、女性ならデート相手や男性の友人に弱みを話したら、助けてあげたいと思ってもらえるのでは。でも、男性同士でそれはない。逆に、弱みを見せるとナメられるかもしれないと思ってしまう」
弱者男性パンデミック

イラスト/サレンダー橋本

 女性が精神疾患などの弱みを見せた場合、その女性を守りたいと考える、いわゆる「理解ある彼くん」を得られる可能性がある。だが、男性が最初から障害を告白した場合、女性が「あなたを守りたい」といって、男性を保護することはあまり期待できない。  ただ、がんになった場合、女性は男性の6倍離婚されやすいといったデータもあり「理解ある彼くん」の存在が女性にとって永久不滅ではないことも判明している。それでも、弱みを見せると最初から恋愛対象として相手にされない男性が、はなからパートナーに頼りづらい事実は残る。

女性支援団体4829、男性支援団体ゼロの衝撃

 福祉に頼ることができたみさこさんですら、支援団体のような「助けてくれるグループ」からの支援は言及しなかった。日本にある認定NPOの内訳を見ると、女性を専門に支援する団体が4829あるが、男性支援団体はゼロ。内閣府が定めるNPOのカテゴリーにすらないので、存在そのものが想定されていないのである。みさこさんは心身に限界を感じ、自己破産の手続きを申請した。そして幸いにも、人生を借金ゼロでやり直せる見通しだ。  しかし、それはみさこさんがある種の「強さ」を持っていたからだと言える。男性としてのプライドを維持しながらも、自分が弱い立場にあることを認め、福祉に頼るには勇気が必要だからだ。  そういった意味で、自分が弱者男性であると認めることができ、生き残ろうと考えられる人は逆説的だが“強い”と言えるかもしれない。より多くの男性が、自分が弱者側に追いやられていると認められず、歯を食いしばって耐えている。そして、耐えきれなくなると福祉に頼ることなく、死を選んでしまうからだ。  もっとも弱い立場に置かれた男性は、今も静かに死んでいく。
ライター、経営者。主にキャリアや恋愛について執筆。5000人以上の悩み相談を聞き、弱者男性に関しても記事を寄稿。著書に『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)『ハピネスエンディング株式会社』(小学館)。X:@10anj10

弱者男性1500万人時代 (扶桑社新書)『弱者男性1500万人時代』 (扶桑社新書)

データで読み解く“弱者男性国家”ニッポンの現在

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