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2023年秋ドラマ「コア視聴率」ベスト10。すべて“合格ライン”超えの大混戦

コア視聴率を番組関係者が最重視するワケ

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写真はイメージです

 ここで、どうしてコア視聴率を取り上げるのかを説明したい。まず3年7カ月前から世帯視聴率はテレビ界、広告界で使われていない。各局の株主報告書からも消えた。遠からず視聴率は個人に一本化されるだろう。  勝手にルールが変えられたわけではない。世帯視聴率では視聴実態が掴めないのだ。視聴者総数すら分からず、高齢者好みの番組ほど数値が高くなってしまうからである。  なぜ、世帯視聴率は高齢者好みの番組ほど数値が上がるのか。それは高齢者の数が多く、テレビをよく観るため。数の少ない20代が平日1日にテレビを観る時間は約1時間29分なのに対し、70代は約5時間半観る(2022年、総務省調べ)からである。

秋ドラマ17本中10本はコア狙い

 しかも世帯視聴率は家を数えているから、数値が高くても視聴者総数が多いとは限らない。そこで2020年3月に個人視聴率が導入された。米国では1990年代から導入されており、世界的な流れでもある。  個人視聴率は「何人が観ていたか」が一目瞭然なので、フェアなのだ。関東地区の場合、視聴者全体の数は約4050万人だから、個人視聴率1%の番組は40万5000人が観ていたことになる。観ていた人の年代や性別なども分かる。個人視聴率が導入されたから、その応用といえるコア視聴率も使えるようになった。観ている人の年代が分かるコア視聴率がないと、現代のドラマは正しい評価がしにくいのである。  筆者が見たところ、秋ドラマ17本のうち、10本は明らかにコア視聴率狙いだ。たとえば『いちばんすきな花』を観て、共感する60代、70代はごく少数に違いない。それなのに世帯視聴率で評価を下すのは乱暴だ。 『セクシー田中さん』もそう。コア視聴率狙いは明白。にもかかわらず、高齢者が観ないと上がらない世帯視聴率の数値を持ち出し、「視聴率が低い」と評するのはフェアではない。実は『ブラッシュアップライフ』もあれほど話題になりながら、「低視聴率ドラマ」と酷評する向きがあった。
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ベスト10すべてが“合格ライン”の2.0%超え
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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