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ディズニーシーの園内が“複雑”な理由。なぜ構造が「日米で大きく異なる」のか

西洋は「中心」、日本は「奥」を意識している

槇はそのように日本の都市構造が入り組み、中心を欠いていることによって、日本の空間に対する認識に「奥の思想」が特徴的に見られると書いている。西洋の都市が「中心」を意識しているのに対し、日本の思想は「奥」を意識しているのではないかというのだ。 道が入り組んでいることによって人はその都市の中をさまよい歩き、最終的にはその「奥」へと進んでいく。迷路のような複雑さは、必然的にその空間の「奥」を想起させるのだ。そして、伝統的に日本の都市では、そうした「奥」に「山」や「古墳」のような「盛り上がった形をしているといった共通点をもっている」ものが多くあるという。例えば、神社が分かりやすいかもしれない。長い階段やたくさんの鳥居を抜けて「奥」に進んだ先には山があって、そこに御神体が祀られていたりする。

TDSの「奥」には「ピラミッド型の宮殿」が

さて、そんなことを考えてTDSのマップを見てみると、たしかにあった。「奥」であるところには「ロストリバーデルタ」があって、そこはうっそうとした森で囲まれている。もはや、私自身の主観でしかないことを承知で書くのだが、確かにTDSを歩いて「ロストリバーデルタ」に向かうときには、園内の奥へと進んでいる感覚を覚える。 そして、その中には「インディージョーンズアドベンチャー クリスタルスカルの魔宮」が入るピラミッド型の宮殿がある。なるほど、鬱蒼とした森の中に、盛り上がった建造物。槇が日本の都市の特徴として書いた通りの構造がTDSに見られるではないか。 このアトラクションのピラミッドの形は、マヤ文明の遺跡・ティカル第一神殿をモデルにしている。実はアメリカ・アナハイムのディズニーランドにも、インディージョーンズをテーマにしたアトラクションがあり、アトラクション自体の内容はTDSと同様だ。しかし、その外観はピラミッド型ではない。
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わざわざピラミッド型に変えた?
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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