住宅の浴室選びは「下位グレードが正解」。“コスパだけじゃない”理由とは
今、住宅系のYouTube界隈を騒がせている男がいる。動画チャンネル『ジュータクギャング』の押村知也だ。設計から建築、インテリアコーディネイトに至るまで住宅に関するすべてをこなす住宅のスペシャリスト「住空間クリエイター」である。歯に衣着せぬ彼の発言は、わかりやすくて痛快。『ジュータクギャング』は、更新のたびに一般視聴者の心をつかみまくっている。
そんな押村は、もちろん浴室、風呂にも一家言ある。当然、オプション選びでは最上グレードを選択するものかと思いきや、「下位グレードが最強」だと断言。その背景には、素人が知らない住宅業界のカラクリや慣習があった。
「バスルームというのは、人間の価値観が表れる場所。毎日長風呂でお風呂をこよなく愛している人なら、好きなだけお金をかければいいと思います。しかし一方で、体を洗うだけの場所、湯船に浸っても短時間、多くの人はこういった使い方でしょう。であれば、ソファやキッチンなどほかにお金をかけるべきものがある。そもそも、バスルームは使っていれば傷みます。何十年ともつものではありません」
『住宅リフォーム市場データブック2021』によれば、三大都市圏の戸建てとマンションにおいて、リフォームされた部位の1位は居間(リビング)、2位キッチン、3位トイレ、4位浴室、と続く。新築であろうと、水回りのリフォームはゆくゆく避けられない定めといえよう。もし限られた資金で家を建てたり買ったりするのであれば、投入するお金の比重は見極めなくてはならない。
「バスルームを注文するときによくあるオプションは、200万円から300万円以上する最上級、高級グレード、100~150万円程度の一般といったグレード分けです。このなかで最初に除外すべきなのは最上級。先ほど言ったように、バスルームは傷むものなので、そもそも巨費を投ずるところじゃない。一般グレードでも、十分にいいバスルームができるので、見栄や『ついつい』でグレードを上げるべきではありません」
高級グレードを除外するには、もう一つ理由があるという。
「じつは、それぞれのグレードには、消費者が目にする定価と、もう一つの値段があります。それが掛け率、いわゆる卸値です。それぞれの機器メーカーが工務店やハウスメーカーに納入する金額と、定価は異なります。一般グレードの掛け率は低く抑えられている一方で、超高級や高級のグレードの掛け率は高くなります。それはなぜか? 機器メーカーは掛け率の高い高級グレードを売りたいからです。住宅設備は一般から高級にグレードを上げるとかなり高くなり、さらに超高級に上げるとめちゃくちゃ高くなるのは、そういった業界の販売方法があるからです。それは言い換えれば、一般グレードが客にとってはもっともお得だということ。コストパフォーマンスに一番優れているわけです」
松竹梅があると、人は「竹」を選ぶという心理学に基づいた販売手法なのかもしれない。しかしながら、グレードはまず「梅」から検討せよ。これがバスルーム選びの鉄則のようだ。さらに、パーツごとにも選び方のコツがあるという。
松竹梅の「梅」がもっとも高コスパなワケ
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(おしむらともや)スタイラス所属。20代で建築、都市計画、インテリア、暮らしについてカナダ、アメリカで学び、輸入住宅などを手掛けるも挫折、住宅とは何かを見失う。大手ハウスメーカーや大手デベロッパーにコンサルティングして感じた「業界の嘘」と「都合の良い慣習」に納得できず、悪しき慣習にまみれた日本の住宅づくりからの逸脱が始まり、住宅業界の異端児となり、1000棟以上の建築設計を手掛ける。2022年7月にYoutubeチャンネル『ジュータクギャング』を開設。近著『美しい家のつくりかた』
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『美しい家のつくりかた』 1000軒の家を建ててわかったこと |
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