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19歳の芦田愛菜、“初の社会人役”で注目。『さよならマエストロ』初回放送でわかったこと

世代を問わず楽しめる『さよならマエストロ』

さよならマエストロ

番組公式HPより

 TBS『日曜劇場 さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(日曜午後9時)は良く出来た作品だ。出演陣の演技は文句の付けようがないし、観る側に想像の余地が十分つくられている上、メッセージ性もある。世代を問わず楽しめそうなところもいい。  14日の初回の放送前は「どうして19歳で社会人経験のない芦田愛菜が、20歳の市役所職員役なのか?」と少し不思議だったが、初回を観て納得した。20歳といっても様々ではあるものの、芦田が演じる晴見市役所文化振興課の夏目響はやや幼い。  西島秀俊(52)が演じる父親の元指揮者・夏目俊平と5年も断絶している。口も利こうとしない。ある出来事が理由というが、ちょっと子供じみている。だからこそ、まだ学生で響より年下の芦田は適任だった。  父娘はなぜ仲違いしたのか。響はヴァイオリンを5年前に止めてしまった。このことと重なり合うのだろう。同時期に響は交通事故に遭ったが、これは直接の理由ではないのではないか。  響は事故の直前、ヴァイオリンの演奏会に臨んでいた。演奏を終え、客席に目を向けた。視線の先に何があったのか、それともなかったのか。おそらく、響が誰よりも演奏を聴いてほしかった俊平の姿がなかったのだろう。

取り返しのつかない過去とは

 俊平は「うたカフェ二朗」のマスター・小村二朗(西田敏行)に対し、「15歳だった娘に僕は取り返しのつかないことをしてしまいました」と後悔を明かした。俊平は世界的指揮者で多忙な日々を送っていたが、だからといって多感な時期の娘を裏切っても良いということにはならない。  俊平は二朗に向かって「僕は音楽をやる資格がないと思い、指揮者を止めました」とも語った。そこまで思い詰めたのは俊平の性格からだろうが、近しい奏者の演奏を見守らないのは音楽家として不実に違いない。  俊平を見ていると、悪意がなかったのは分かる。俊平は自分の演奏会を控えていた。この人は不器用で、2つのことを同時に出来ないのだろう。特に自分の関わる音楽が目の前にあると、そうなるようだ。  響の弟・海は、俊平を拒絶する姉に向かって、「2人とも5年前で時が止まっている」と言い、苛立つ。父娘関係の生育が止まったから響には幼さが残る。やはり芦田を配役したのは妥当だった。  時を動かそうとしているのが俊平の妻・志帆(石田ゆり子)。画家だったが、絵に専念する道をあきらめ、俊平と子供たちの面倒を見てきた。5年前からはウィーンにいる俊平と別居し、実家のある晴見市で子供たちと暮らしている。俊平に「フランスから(絵の仕事の)オファーがあるので子供たちのことを頼みたい」とウソをつき、帰国させた。
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志帆が国内にとどまった理由は?
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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