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19歳の芦田愛菜、“初の社会人役”で注目。『さよならマエストロ』初回放送でわかったこと

大島美里氏の脚本に期待が集まる

 西島の演技は相変わらず出色。何をやっても西島であるところが偉大だ。世間には役柄に応じて七変化できる人を「憑依型俳優」と呼び、そんな人以外は名優と認めない向きが一部にあるが、それは間違いだ。  高倉健さん、渥美清さん、石原裕次郎さん、勝新太郎さん。みんな何をやっても同じだった。健さんなどは自分の持ち味に合わないと思った役柄は最初から断った。自分の個性に役柄のほうを合わせることが出来る人こそ名優でスターだという考え方が俳優の世界には強い。  芦田は表情の変化の付け方や仕草に非凡さを感じさせる。経験したことのない社会人役をどう演じるのか。この作品の見どころの1つだ。  玉山が楽団団長の古谷を演じているのには驚いた。古谷はキーパーソンではあるが、地味な男で、玉山がこれまでに演じてきた役柄とは随分と違う。新境地に挑む玉山の演技も注目に値する。  脚本はTBS『凪のお暇』(2019年)、同『妻、小学生になる』(2022年)の大島美里氏(46)。クスリと笑わせた後、目頭を熱くさせるような作品を得意とする。説教臭くはないが、世間に向かって言いたいことを盛り込む。この作品もそうなりそう。  最後になるが、『さよならマエストロ』とはどういう意味なのか。響と俊平の完全なる決別とも受け取れるが、そうはならないだろう。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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