更新日:2024年05月08日 15:32
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2009年に閉園した遊園地の今。「侵入者を防ぐ高い塀」がもたらした“皮肉な現象”――大反響トップ10

茂みの中からタヌキが出現

こうなっていては仕方ない、と諦めて帰ろうとしたそのとき。塀を囲んでいる茂みの中から、ひょっこりとタヌキが出てきて、こちらの様子を見つめるや否やすぐにまた茂みに戻っていったのである。タヌキなんて、東京でなかなか見ることはない。 そういえば、この高い塀に気を取られてあまり見ていなかったが、この多摩テックを囲む塀はそのほとんどが緑に囲まれていて、東京ではあまり聞かないような鳥の鳴き声が聞こえたり、虫が見られたりと、非常に自然が豊かである。 それもそのはずで、元々この辺りの多摩丘陵は武蔵野の自然が豊かな地域であった。高畑勲の映画に『平成たぬき合戦ぽんぽこ』という作品がある。多摩ニュータウンと思しき地区の開発によって住みかを奪われそうになったたぬきが人間に姿を変え、開発を進めようとする人間と対決をする、というのが大まかなストーリーだ。 舞台となった多摩ニュータウンは、この多摩テックの跡地に近い。やはりこの辺りは元々自然が豊かで、たぬきがいたのである。

絶滅危惧種も発見されていた

実際、多摩テックの跡地において、たぬきを見たことがあるのは私だけではないらしい。多摩テック閉園後、緑が生い茂ったこの場所で、たぬきの目撃情報が相次いでいるのだ。それだけではない。 この跡地には、絶滅危惧種に指定されているキンラン(ランの一種)や、オオタカの営巣地が発見されているともいう。こうした報告を受けて、東京都自然環境保全審議会では、多摩テック跡地の利用計画も含めて、この自然環境の保全について協議されたことがある。 議事録によれば、この地区にはキンランやササバギンラン、またオオタカだけでなくホオジロや、ホタルなどについても触れられていて、周辺環境と合わせて、相当豊かな自然が多摩テック周辺に広がっていることが推察できる。
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侵入規制により自然が回帰する“皮肉”
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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