更新日:2024年05月08日 15:32
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2009年に閉園した遊園地の今。「侵入者を防ぐ高い塀」がもたらした“皮肉な現象”――大反響トップ10

侵入規制により自然が回帰する“皮肉”

多摩テックの跡地への侵入がきわめて厳重になっていることは、すでに触れた通りだ。テーマパークマニアにとって、それは残念なことかもしれない(もちろん、廃テーマパークへの侵入は不法であるけれど)。 しかし、一面においてその場所への立ち入りが禁止されているということは、その場所の自然が結果的に保全されるということであり、現実に多摩テックでは、侵入規制が激しくなったことによって、その場所に絶滅危惧種の植物が生えたり、かつてこの場所を追われたタヌキたちが戻ってきていたりする。テーマパークへの侵入規制が、逆に自然保護につながるということがそこでは発生しているのである。
多摩テック

緑色の柄は、かなり自然に侵食されている

このような現象は、多摩テックだけではなく、日本全国の廃テーマパーク跡地で発生していることなのではないだろうか。 テーマパークといえば、私たちは人工的に作られ、自然が排除された場所だ、というイメージを持つかもしれない。しかし、ひとたびそのテーマパークが閉園し、そこに誰もいなくなり、なおかつそこへの侵入規制が厳しくなると、そこには、テーマパークが排除しようとした「自然」が思わぬ形で回帰してくるのである。 なんとも皮肉な現象だともいえるが、このような「自然」の回帰もまた、テーマパークの語られなかった「B面」であろう。多摩テック跡地にひょっこりと顔を出すタヌキたちは、そんな、日本のテーマパークの裏側を私たちに教えてくれているのかもしれない。 <TEXT/谷頭和希>
ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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