今後の課題は「守備時におけるコミュニケーション」
ベトナム戦では攻守両面で出来の良さを見せた日本代表だが、もちろん今後に向けた課題はある。
内容的には攻守ともに完璧に近いものがあったが、課題を挙げるとすれば、
守備面で選手間のコミュニケーションに修正が必要だ。
1失点目では、相手がコーナーキックを蹴る前にボール方向へ寄っていった選手がいた。南野と菅原由勢の2人が釣られて着いていき、もともと彼らがいたスペースで相手をフリーにしてしまった。
仮に1人であれば、無駄なスペースは生まれず相手もフリーにはならなかっただろう。また、2失点目はヘディングの強い相手に対して誰がマークするのかはっきりしておらず、ミスマッチが生まれて競り負けてしまっている。これも事前に相手を研究してそれぞれのタスクを決めておけば防げた可能性が高い。
さらに2点目のきっかけとなるファウルの前に、遠藤航と板倉滉がハイボールに対して同時に競りに行った結果、
ボールが背後にこぼれて菅原がファウル覚悟で止める状況をつくり出してしまった。とはいえ、これはコミニケーションが高まることでなくなるミスである。
しかし、他にも心配なシーンがあった。谷口彰悟、板倉の両センターバックは相手の縦パスに対して、受ける相手より前に出てボールをカットすることを狙っている。積極的な守備自体はチームとしても狙いであり、よく機能しているプレーのひとつでもある。しかし、
ボールを受ける相手FWのレベルが高ければ、そのプレーをきっかけに裏を取られ、一気にピンチを招いてしまうことがある。
それはどちらの技術が優れ、どちらが優位な体勢かを都度判断し、「前に出てカットを狙う」のか、「相手に前を向かせないのか」を選択しなければならない。そして、周囲の選手が考慮しておかなければならないのは、裏を取られた場合のカバーリングだ。2失点目のきっかけとなったシーンもこの状況下での判断ミスである。
今後、相手FWのレベルが高くなると失点を招きかねないプレーなので、守備面で修正しておきたいポイントとして挙げられる。
攻撃面も守備面と同様に大きな問題は抱えていない。こちらもあえて課題を挙げるとすれば、
狙いどころや崩し方の流れをチームで共有することになる。
今大会においてはどの相手もベトナム代表のように日本代表を研究して対策を練ってくる。こうした相手に対する日本代表の基本的な戦い方は、
ボールを保持しながら相手の綻びを見つけてそこを突き、シュートにに結びつけるという作業を繰り返すことになる。
ベトナム代表戦に関していえば、日本のサイド攻撃を警戒して最終ラインに5人を並べて、特に伊東純也に対しては複数人で対応してきていた。左サイドでも同様の守備を見せていたが、相手が個人レベルで劣っていたことに加えて伊藤洋輝が高い位置取りができており、比較的容易に切り崩すことができていた。
あくまで結果論ではあるものの、左から仕掛ける割合を増やすべきだったと思う。
また、ベトナム代表は最終ラインを高く保つようにしていたため、GKとの間に比較的に広大なスペースが生まれていた。細谷真大、南野の他にも伊東や中村もスペースを狙った動きを見せていた。しかし、残念ながら効果的なパスは少なかった。
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
記事一覧へ