更新日:2024年02月11日 13:39
お金

立ち飲み「晩杯屋」はなぜ安い?「人件費は抑えていない」驚きの店舗運営術に迫る

安さの鍵は「仕入れ」にあった

晩杯屋

元気な接客も魅力のひとつだ

値上げラッシュによる影響は飲食店にとってかなりの痛手であるはず。『晩杯屋』が価格を安くキープできるのは、仕入れの方法にあるという。 「現在の代表を含めたメンバーで毎日豊洲に行っていますが、仕入れ方が他のお店とは違います。豊洲以外の市場は、近くの漁港で水揚げされた魚のうち、その日に売り切れる分だけを仕入れますが、それでも余った魚は全部豊洲に行くようになっているんです。つまり豊洲が調整弁になっているということ。結果的に豊洲では、必ず何かが余っていて、何かが足りていない状態です。そこで弊社は仲卸さんと関係を築いて、その日仲卸さんが売りたいお値打ちの魚を優先的に分けていただけるようにしております。その代わりと言う訳ではありませんが、余剰が発生し困っている時も最大限購買するように努力しております。長く取引を続けるためにも、弊社は仲卸さんに取って都合の良い取引先になって、双方が損の無い状況を継続するのが大方針です」 この方法ならば確かに仕入れ値は安くなる。しかしこれでは、お店で提供できるメニューが安定しないのではないだろうか。 「だから、晩杯屋にはグランドメニューがありません。店舗の発注は、魚の種類を指定せず、必要なキロ数だけです。店に届いた発泡スチロールを開けるまで、どんな魚が入っているかわからないんですよ。また、先述の通り仲卸さんからお願いされることも多々ありますので、市場の都合で発注数の倍近い量が納品されることもあります。それを厨房で一からさばいて調理する必要があるので……。現場の調理担当は本当に頑張ってくれていると思います」 まるで福袋のように、「何が入っているかわからない状態」からメニューを作るという発想力。そして、アイデアを実現できる料理人の“腕”こそが晩杯屋における最大の武器なのかもしれない。

あえて“値下げ”したワケは…

さて、取り皿も、グランドメニューもない晩杯屋だが、無料のおしぼりもない。必要ならば70円で購入することになる。ここにも同社の理念が現れている。 「無料で全てのお客様に提供すると、それも価格に上乗せされることになります。つまりおしぼりを使わない方にも、おしぼり代を払ってもらうのと同じことじゃないですか。ただ、有料にするからには良質なものを提供したく、新幹線のグリーン車でもらえるものと同様のコットン製です」 驚くことに2022年10月に一部の酒類を“値下げ”までしている。それが実現された背景を鈴木氏に聞くと、周囲への感謝と支え合いの思いが垣間見えた。 「実はその月、大手ビールメーカーを中心にあらゆるお酒の価格が一気に上がったんです。そのため、弊社もドリンクメニューの価格改定を余儀なくされました。ただ、一部の日本酒と果実酒は値上げがありませんでしたその心意気に応えたくて、お店での販売価格は値下げして、よりたくさんの人に飲んでいただけるようにしたんです」
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今後は未進出の地域に出店も
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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