2024年冬ドラマ「今からでも観たい作品」BEST5。木梨憲武主演作は4位、クドカン脚本は2位
冬ドラマの序盤が終わろうとしている。全作品に第一話から目を通している筆者が、今からでも観たいお勧め作品ベスト5を挙げさせてもらう。
(NHK 土曜午後10時)
人生の2大イベントは「誕生」と「死」。そのうち「誕生」をテーマにしたドラマはTBS『コウノドリ』(2015年)など数多いが、「死」を真正面から扱ったドラマは皆無に等しい。作風が重たくなるからだろう。だが、この作品は末期がん患者らの死のリアルを描いている。
舞台は終末期病棟。余命いくばくもない患者が入院している。第1回には遊び人風の男・本庄昇(古田新太)が登場した。ご法度であるタバコを隠れて吸ったり、主人公の看護師・辺見歩(岸井ゆきの)を合コンに誘ったり。いい加減で陽性の患者に見えた。
本庄は自分の未来にも悲観的には見えなかった。歩に対し、「血液検査でなんとかって数値が良かったから、奇跡が起きちゃうんじゃないかな」と、根拠のない言葉を口にしていた。
だが、本庄は何の前ぶれもなく病院の屋上から飛び降りてしまう。遺書はなかったが、自死だった。歩ともう1人の主人公で医師の広野誠二(松山ケンイチ)は悔しがり、落胆する。おそらく死の恐怖に耐えられなかったのだろうが、本当のところは誰にも分からなかった。本庄が家族に見捨てられ、孤独だったことだけは確かだった。
同じ第1回。患者の妻・水谷久美(泉ピン子)は夫の悪態に苦しめられる。夫は病と認知症を併発していた。
その夫が人工呼吸器を付けなくては延命できない状態になる。治療費が心配だった息子は延命に反対する。一方、久美は医師に向かって延命を哀願する。「夫には1日でも長く生きてほしい!」。費用のことなど二の次だった。
息子のような考えに至っても不思議ではない。しかし、現実には肉親を死に導くのは簡単ではない。一緒に過ごした楽しい日々が目に浮かぶ。延命をする、しないのどちらが正しいかは誰にも決められないが、この作品が観る側に考えることを要求するのは確かである。
原作は元看護師の沖田×華氏による人気漫画。脚本は実力者の安達奈緒子氏が書いている。その上、岸井と松山も名優。さらに入院患者役も樫山文枝(82)、根岸季衣(70)、木野花(76)、松金よね子(74)、白川和子(76)ら名優がずらりと揃っている。
この作品は重さや暗さを感じさせない。脚本が優れていて、出演陣の演技も出色だからだろう。そもそも死は特別なことではない。
5位『お別れホスピタル』
「死」がテーマでも重さや暗さがないワケ
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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