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2024年冬ドラマ「今からでも観たい作品」BEST5。木梨憲武主演作は4位、クドカン脚本は2位

2位『不適切にもほどがある!』

(TBS 金曜午後10時)
不適切にもほどがある

番組公式HPより

 想像を超えたタイムリープ作品。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)や日本テレビ『ブラッシュアップライフ』(2023年)は目に見える物質や文化の進化を主な見どころにした。だが、このドラマの脚本を書いているクドカンこと宮藤官九郎氏(53)は道徳観や価値観の変化に着眼した。ここが新しい。  阿部サダヲ(53)が扮する中学教師の主人公・小川市郎が、1986年と現代を行き来するという設定を生かし、38年間で生じた社会のルールや人間の内面の変容を見せている。  この間、喫煙に対する社会の目が厳しくなったり、ケツバットなど精神論が許されなくなったり、多くのことがパワハラと断罪されるようになったり。38年はそう長くはないはずだが、社会のルールと人間の内面は随分と変わった。  一方で過去の物質や文化も振り返っている。「ビニ本」(大流行は1980年)、「メタルテープ」(1979年)、「写ルンです」(1986年)、「クラリオンガール」(1975~2006年)。目のつけどころがシブイ。「ビニ本」という言葉が出てきたタイムリープ作品はなかったはず。これも新鮮と言うべきだろう。  物語の行方がさっぱり分からないところもいい。小川市郎が現代ではEBSテレビにカウンセラーとして就職。ギョーカイドラマの1面を持つようになってしまった。これからも奇想天外な展開が待っているのではないか。  クドカンと阿部は劇団「大人計画」の盟友。演劇人だったクドカンに初めて脚本を書かせたのは、このドラマの磯山晶プロデューサー(コワイ童話『親ゆび姫』1999年)。息の合った仲間でつくっているのがうかがえる。そうでなかったら、誰かが「やり過ぎでは」と言いそう。

1位『正直不動産2』

(NHK 火曜午後10時)
正直不動産2

(C)NHK

 ドラマの続編は期待外れに終わることが珍しくない。しかし、この作品は違う。パワーアップした。    前作は山下智久(38)が演じる主人公の不動産営業マン・永瀬財地が、ウソが吐けなくなって悪戦苦闘する物語だった。今回は新入社員の十影健人(板垣瑞生)や他社のライバル・神木涼真(ディーン・フジオカ・43)らが登場人物に加わったことで、厚みがグンと増した。  十影はひたむきに仕事をする上司の永瀬に対し、「タイパ(タイムパフォーマンス=費やした時間に対する満足度)悪いわ」と、うそぶいた。また、永瀬から顧客回りを頼まれると、「ランチ(昼休み)っすから」と断る。とんでもない新入社員だった。  その後、永瀬の教育などによって十影は心を入れ替えたが、まだ安心するのは早そう。そもそも観る側は十影によって永瀬が苦労させられたほうが愉快だ。  一方、神木は不動産を売るためなら何だってする。法を犯すことも厭わない。それもいい。主人公の敵が手強いほどドラマは面白みが増す。  ほぼ毎回、家族愛が描かれるのも特徴。お仕事ドラマであると同時にハートフル・ホームドラマでもある。  コメディ色も強い。笑いの部分を主に担当するのは永瀬の部下・月下咲良(福原遥)。純粋でウブな月下はトンチンカンな行動に走ることが多い。顧客のラーメン店が経営不振に陥ったときには無給で手伝った。見どころ満載のドラマなのである。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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