エンタメ

尾野真千子の“ある部分”をつい見てしまう理由。色っぽい濡れ場でも気になる“場所”とは

尾野真千子という“運動体”について考える

この不思議と心地いい物語を書き、演出を担当した冨永昌敬監督は、ひとりの俳優と唯一無二の物体との然るべき距離と関係性に何を見ているのか。第3話ラスト、朝の食卓で高笑いしながら、漬物をパリパリする小野を見て、思った。 「あ、彼女はコメカミの俳優である」と。ボリボリは鳴らない。しっかり噛んでいるのに、パリパリと軽妙な響き。その分、コメカミが。冨永監督は、尾野真千子という運動体の得体のしれない有機体感を捉えているんじゃないか。 人間の手から手へ投げ出されるように揺れ動く肉の塊も第4話でオダギリが薄ら笑いを浮かべて発進させるブルドーザーも、運動っぽいものはすべて、尾野真千子からニョキッと伸びた手足みたいな働きをする。 ブルドーザーの所有者である土木会社専務の煙草に火を点けるライターもそうだけど、細かな運動がひとつひとつコレクションされて、運動体としての尾野の部品として適宜カスタマイズされてくみたいな。漬物パリパリのとき、ちょっと可笑しな機械仕掛けになっていたのは、まだカスタマイズが完了していない不完全の状態だったからか。

濡れ場でもコメカミが気になる…

あれ、冨永監督の他作品、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(2018年)での小野はどうだったか。末井昭の自伝を原作とする本作では、人妻が他の男性とダイナマイトで吹っ飛ぶ“ダイナマイト心中”を完遂する役柄を演じた。この衝撃的な実話を生きる上で、着物とつっかけで市場を歩く冒頭場面の尾野のスキャンダラスな色っぽさったらない。 色気の出どころを探るべく、触手を伸ばして画面を見つめると、発散場所はやっぱりコメカミなんじゃないかと感じるのはぼくだけかな。子どもたちを追い出し、家に上がり込んできた男に抱かれる瞬間では、コメカミ中心の濡れ場(?)が成立している気がしてならない。 ええい、こうなったら、監督に直接聞くのが早い。実は冨永監督は、ぼくが通った日本大学芸術学部映画学科監督コースの講師。昔のよしみでということで、勝手に妄想した場面の細部について、Xのメッセージで質問を送った。
次のページ
「珍しい肉」と「珍しい漬物」の正体は…
1
2
3
コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションでR&B部門を立ち上げ、企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆。最近では解説番組出演の他、ドラマの脚本を書いている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ