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「遺体を取り違えて出棺する」ミスも…1兆円産業「葬儀業界」が抱える大きな課題

オーダーメイド型の葬儀も登場し、人気を博す

「家族葬ファミーユ」を運営するきずなホールディングスも好調そのもの。2023年5月期の売上高は前期比13.6%増の105億3500万円、営業利益は同10.2%増の11億8100万円でした。2024年5月期は同20.4%増の126億8000万円、営業利益は同36.3%増の16億1000万円を予想しています。3期連続の2桁増収、営業増益を達成している急成長企業です。  今期は20店舗、来期は23店舗の増加を見込んでいます。これだけのスピードで出店しても需要が獲得できる背景として、低価格もさることながらオーダーメイド型の葬儀プランを提供していることが挙げられるでしょう。  野球、ゴルフ、音楽など生前に親しんでいたものを、飾り付けや演出に取り入れ、家族の納得度が高い葬儀を行えるようにしました。  きずなホールディングスはオーダーメイド型プランを強化するため、2023年5月期から人員の増強を図っています。その結果、2024年5月期の全葬儀に占めるオリジナルプランの比率は、前年の25.0%から31.3%に急増しました。当然、単価は高くなります。同社の営業利益率は2023年5月期が11.2%。2024年5月期は12.7%となる見込みです。  高単価のオーダーメイド型と低単価のシンプル型の2つを用意するやり方は、価値観が多様化する現代の潮流を巧みに捉えたものだといえます。

取り違えて出棺したミスも。人材不足が大きな課題に

 葬儀のサービス力が上がるのは消費者にとって歓迎すべきもの。しかし、事業者側は人材不足に苦しむようになるでしょう。低単価で利益率が悪く、件数も多いのでれば、従業員は安く長く働くことにもなりかねません。そこにプランニング力が求められれば、専門的な知識や高度な提案力が求められます。企業は定着率を高める取り組みが欠かせません。  ティアは2024年3月に「ティア越谷」で男女2人の遺体を取り違えて出棺したミスが発覚し、大問題となりました。名札の確認ミスだったといいます。2023年4月にはティアのフランチャイズ加盟店の従業員が、香典袋に入っていた現金12万円を盗んだとして逮捕されています。このように未熟でプロ意識の低い人材が現場に立つことになれば、ミスや不祥事が目立つことになりかねません。  葬儀場の運営会社は、運営体制の効率化を進め、提案力を上げつつ低単価時代に備えるという難しいかじ取りが求められるようになりました。 <TEXT/不破聡>
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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