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<新宿タワマン刺殺事件>51歳男が20代女性に…和久井容疑者の“客観性のなさ”を育んだ「日本特有の問題点」

女児向け本に感銘を受ける成人男性

自分をもっと好きになる 【ハピかわ】かわいいのルール

『自分をもっと好きになる 【ハピかわ】かわいいのルール』(池田書店)

 そうした中で、2019年に発売された『自分をもっと好きになる【ハピかわ】かわいいのルール』(池田書店)が、いま20~40代の男性に売れている(※)のは象徴的な出来事です。小学校高学年の女子に向けた本に、なぜ社会人男性が感銘を受けているのでしょうか? ※「なぜ? 女児向け本、社会人から大反響で10万部突破  編集者が明かす、意外なヒットの理由」Real Sound 2024年5月10日配信より 『ハピかわ』のコンセプトは明快です。他人との関係をどうやって気持ちよく作っていくか。そのための具体的な方法を細かく説明しているのです。たとえば、人の目を見て挨拶をする。猫背にならない。下品ではない笑顔の作り方。清潔感あるファッション。  こうした内容から伝わるのは、自分という人間は他人のために存在しているということ。そうした心配りが相手に伝わるような振る舞いこそが重要だと言っているのですね。そう、まさに客観性の話なのです。  モテるモテない以前に人としてわきまえておくべきことを教えてくれるのです。

日本に「男性向けの教科書」がない理由

 筆者は『ハピかわ』を読んで、これは紳士の心得そのものではないかと思いました。アメリカでロングセラーの『HOW TO BE A GENTLEMAN』という本があります。2022年には改訂版の日本語訳『ドアはあけたらおさえましょう』(ジョン・ブリッジズ 訳酒井章文 サンマーク出版)が発売されました。コンセプトは全く『ハピかわ』と同じです。
ドアはあけたらおさえましょう

『ドアはあけたらおさえましょう』サンマーク出版

<大事なのは、まわりの人が気兼ねなくいられるようにすること、嘘偽りなく、心からすてきな人物でいることだ。>(p.4) <紳士の目標とは、自分のためではなく、友人や知人、そして世界全体のために、その場を暮らしやすくすることなのだ。>(p.267)  こうして言葉遣い、テーブルマナー、メールの返信の仕方、会釈の大切さなどを、あらゆるシチュエーションを想定して説いている本です。  なぜ日本にはこのような男性向けの教科書がないのか。あったにしても、なぜモテ要素が入ってきてしまうのか。  そこに闇を感じるのですね。
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おろそかにされてきた男子教育
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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