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<新宿タワマン刺殺事件>51歳男が20代女性に…和久井容疑者の“客観性のなさ”を育んだ「日本特有の問題点」

おろそかにされてきた男子教育

『ハピかわ』が20から40代の男性の支持を受けていることは好意的に報じられていますが、筆者は必ずしもそうは思いません。なぜなら、その事実自体におろそかにされてきた男子教育という空洞があるからです。  これからの社会、特に労働市場はどんどん女性が有利な環境になっていきます。これまでは男性上位だったテクノロジー、科学、数学などの分野でも女性の方が優れた業績を残す傾向にあるとの調査結果もあります。  これまでのように男が職業や経済活動において主導権を握る状況がますます成り立ちにくい世の中になりつつある。その中で、稼ぐ力、モテのみを男の価値とすることには無理が生じてきます。

社会全体として、新しい男性像を構築しなければならない

 現代の男性が置かれた困難な状況を書いた本『Of Boys and Men: Why the Modern Male Is Struggling, Why It Matters, and What to Do about It』の著者、リチャード・リーヴスはこう書いています。 <男性に関する問題は、ほとんどはその男性自身の問題であると定義される。その男、あるいは男の子を一人ずつ矯正していかなければならない、と。こうした個別のアプローチは間違いなのだ。>  稼げる稼げない、モテるモテないではなく、社会全体としてもう一度新しい男性像を構築していかなければならないと言っているのです。  具体的に共有できるイメージがないから、何をもって男であるかが、誰もわからなくなってしまったのですね。  アン・ハサウェイ主演の映画『マイ・インターン』で、ハサウェイ演じるCEOが若手社員を前に現代の男性に対する不満をぶちまけるシーンがありました。 <いまじゃ誰も男のことを“男性”なんて呼ばないの。気づいてた? 女性は女の子から大人の女性に成長した。けど、男は年齢とともに幼稚になっていった。これは長い目で見たら大問題よ。>  小学校高学年の女子に向けた本から40代の男性が学ぶ構図も、これに当てはまるのかもしれません。  いずれにせよ、タワマン刺殺事件、『ハピかわ』現象からは、長らくほったらかしにされてきた男の教育という問題が浮かび上がってくるのです。 文/石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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