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キャリア14年の“現役弁護士”が芸人になったワケ「揺れ動く心も含めて、ネタにしていきたい」

突如現れた、お笑いへの道標

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フリップを使いながら歌った楽曲『法廷の座る位置』。意図せず笑いが巻き起こったことが転機をもたらした

「安定」を捨てた頃から、ライブでの手応えが変わってきた。特に2019年に初めてワンマンライブを開催した頃から、クリエイティブな業界で活躍する人々からのフィードバックをもらうことが増えたという。 「ギアを入れ替えて1年くらいで、エンタメ業界の大物がライブに来てくれてコメントもしてくれるようになって、すごく嬉しかった。ちゃんと評価してくれる人が出てきて、表現者として認められた気がしました」 そんななか、お笑いに転向するきっかけは突如訪れた。 「2022年頃に『法廷の座る位置』という曲をライブで披露したとき、法廷画家に描いてもらった絵を出して、フリップ芸のようにして歌っていたら笑いが起きて。その頃から、お笑いのほうに行ってみたら?とお客さんや周囲から勧められるようになったんです。売れそう、テレビにすぐ出られそうなどと言われ、自分でも、お笑いに行けば、より多くの人に曲を聴いてもらえるのではと思いました。ちょうど事務所の近くにタイタンの養成所があり、そこでオーディションをしていたので、軽い気持ちで応募してみたんです」  オーディションでの藤元さんの評価は高く、すぐに事務所主催のライブへの出演機会を得た。その後、養成所でも優秀な成績を収め、修了生から1組だけが選抜されて出演できる「タイタンシネマライブ」にも出演した。

笑えない事情を笑いに変えたい

 まさにトントン拍子で芸人となった藤元さんがネタづくりにおいて心がけている点は、「深刻な状況をひっくり返すこと」だという。 「弁護士って依頼者だけではなく、自分自身もすごく追い詰められるんですよ。目の前で依頼者が泣いたり、下手すると亡くなってしまうような重い案件もザラにある。そんな状況を、曲の中で反転させることができれば面白いと思ったんです。また、世間では悪とみなされたりマイナスに評価されているようなことが法的には全然違っていたりもするので」  たとえば、借金の時効をネタにした『5年』という曲。 「5年経てばお金返さなくていいよ 時効成立する」 「この前別居したあの夫婦の離婚を裁判所が認める頃には返さなくていいよ」 「今日100万円借りたから、明日からお前とは5年間会えない」 「それでも君が僕を追いかけてきたときは 破産すればお金返さなくていいよ」  曲を作った意図について、藤元さんはこう語る。 「お金の貸し借り一つにもドラマがあるんです。それを笑いに転化したかったんですよね。人間関係が壊れるのはもちろん、とてつもない怨嗟と悲嘆がついて回る。借金を返せなくなったり、破産してしまった人って陰のほうに追いやられがちで、本人も負い目を感じながら生きていくイメージがありますが、借金自体は別にしてもいいし、もっとニュートラルな制度なんだよっていうことを伝えたかった。そもそも、なぜ5年が時効なのか全然わからないですしね」
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