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「スシロー、くら寿司では物足りない客」を満足させる…職人が握る回転寿司「銚子丸」の戦い方

「価格改定による客単価の上昇も」増収に貢献

近年の業績を見てみましょう。2019年5月期から23年5月期の業績は下記の通りです。100均一系かつロードサイド業態である「スシロー」や「くら寿司」の業績が伸びたことを考えると、20年5月期及び21年5月期の業績悪化は逆行しているようにも見えます。 【株式会社銚子丸(2019年5月期~23年5月期)】 売上高:193億円→181億円→178億円→170億円→193億円 営業利益:9.4億円→7,100万円→6.0億円→2.3億円→6.7億円 店舗数:93店舗→93店舗→91店舗→92店舗→93店舗 コロナ禍で大手回転寿司チェーンが伸びた背景には、レジャー要素があると考えられます。以前のように旅行が難しい状況において、子供も楽しめる場所としての需要もあったのではないでしょうか。 とはいえ、23年5月期の段階で以前の水準まで回復し、今期は第3四半期の段階で前年の売上高を11%上回っています。価格改定による客単価の上昇も増収に貢献しているのでしょう。 ちなみに現在では他の寿司チェーンと同様に、フルオーダー制により回転レーンを廃止。タッチパネルで注文した商品が店員、または高速レーンや配膳ロボットが席に届ける方式を採用しています。

今後の海外展開に期待がかかる

今期24年5月期は売上高211億円を予想。今後の方針については決算資料で「きれいな店舗」を掲げており、国内既存店は従来通り古い店舗の改装を進める方針です。また、業績の芳しくない既存店を好立地に再配置する方針も掲げています(スクラップ&リロケーション)。 国内でこれ以上の成長は難しいのでしょう。大規模な出店方針は掲げていません。“グルメ回転寿司”業界は寡占化は進んでいませんが、関西では「にぎり長次郎」、中部では「にぎりの徳兵衛」といった各地にドミナント出店する競合が存在します。 そうした背景もあり、直近では海外展開を模索する動きが見られます。今年3月に銚子丸は、ロイヤルホストを展開するロイヤルHD及び商社・双日と共に、米・カリフォルニアで合弁会社を設立しました。ちなみにロイヤルHDは株の2割を双日が握っており、両者は既に国内外で協力してきました。 銚子丸が加わることで、アメリカでは新たな寿司業態店を出店する方針です。すでに進出を果たしている大手チェーンの背中を追う形になりますが、スーパーでは寿司コーナーが当たり前に設けられているなど、現地では日本人の想像以上に寿司がローカル化していますから、勝算が全くないわけではないでしょう。銚子丸が海外市場をどのように攻略していくのか、要注目です。 <TEXT/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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