「ワンルームマンション投資」に黄色信号。“複合的な要因”でついにブームが終焉か
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
投資目的で物件を購入したにも関わらず、住宅ローンを申し込んで資金をだまし取ったとして、不動産業の男らが逮捕されました。物件の購入者も書類送検される見込みです。
個人による不動産投資は過熱の一途をたどります。長らくワンルームマンションの投資も熱を帯びていましたが、ここにきて暗雲が立ち込めている気がしてなりません。
日本銀行によると、2024年1月から3月までの個人による貸家業の新規貸し出し金額は9778億円(「貸出先別貸出金」)。前年同期間で10.6%増加しました。2019年から振り返っても、3ヶ月で9000億円を突破したのは今回が初めて。コロナ禍で冷え込みを見せる前の2019年同期間は8566億円でした。コロナ前よりも1000億円以上増加しています。
2023年度(2023年4月~2024年3月)に不動産投資ローンとして個人に貸し出した金額は実に3兆円にのぼります。
投資用不動産は一棟アパートやマンション、戸建てだけでなく、店舗、ホテル、物流倉庫など多岐にわたります。
三菱UFJ信託銀行は、2023年9月に発表した「不動産マーケットリサーチレポート」にて、同社が仲介する個人の不動産投資は都市部にある賃貸マンションが主体になっていると記しています。確かに、好立地の賃貸マンションは入居者による安定的なキャッシュフローと資産価値に期待ができます。人気の投資先なのです。ただし、マンション価格は高騰しているのも事実。
不動産経済研究所によると、2023年の東京23区の新築マンション価格は前年比39.4%増の1億1483万円。かつて高級マンションは「億ション」と呼ばれる高嶺の花でしたが、今や平均価格が億を超えたのです。
個人向け不動産投資ローン増加の要因の一つには、物件の取得額そのものが上がっていることがあるでしょう。つまり、高値でつかんでいる可能性があることを否定できるものではありません。
個人の不動産投資において、人気を集めるのが区分マンション。いわゆるワンルームマンション投資です。物件によっては2000万円程度で取得ができます。大手企業の会社員や公務員、医師、看護師などの安定的な収入のある人の支持を集めています。
ワンルームマンション投資の表面利回り(家賃収入を物件価格で割り戻したもの)は年3~4%程度が一般的。ただし、実際には固定資産税や修繕積立金、管理料などが必要になるため、キャッシュフローがマイナスになる人も少なくありません。物件価格が上昇していることから、近年取得した人の大半は事業としては赤字なのではないでしょうか。
これは販売側も織り込み済み。
営業トークで頻繁に語られるのが節税メリット。建物の取得費用は一定期間の減価償却費として経費計上ができます。本業など他の所得から赤字分を差し引く損益通算で、節税が行えるというのです。しかも、ローン返済後の物件は資産として手元に残ります。
ワンルームマンション投資の是非は、キャッシュフロー上は赤字になることと、節税メリットがあるという2つの意見が対立しがち。視点が異なるために話が平行線で噛み合いません。
23区のマンション平均価格が初めて1億円を突破
キャッシュフローがマイナスでもワンルーム投資をするのはなぜか?
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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