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“新聞離れ”が加速、不動産事業も焼け石に水…ジリ貧の大手新聞社が見習うべき「アメリカの事例」

“経営効率が高い”不動産事業でも、会社全体は支えられない

 よく「新聞社は不動産事業があるから経営は安定している」という声が聞こえてきます。  不動産事業が安定した収益基盤の一つになっているのは間違いありませんが、会社全体を支えられるほどの事業規模はありません。  朝日新聞社の2023年3月期の不動産事業のセグメント利益率は19.2%にものぼります。メディア・コンテンツ事業は70億円のセグメント損失を出しました。なお、メディア・コンテンツ事業が利益を出していた2022年3月期の利益率はわずか1.9%。不動産事業の経営効率が高いのは間違いありません。  しかし、不動産の売上規模は350億円程度であり、利益は66億円程度。この事業規模で売上2000億円を超えるメディア事業を長期にわたってカバーするのは難しいでしょう。  朝日新聞社は2019年3月期の売上高が3700億円を超えていましたが、2023年3月期には2670億円まで縮小。わずか4年で1000億円が吹き飛びました。

Z世代はむしろ新聞の情報を信頼している

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画像はイメージです

 新聞社が、何らかの手を打つ必要があるのは明白です。  新聞の発行部数の落ち込みは、Webの発達による情報の取得単価の低下にあります。多くのニュースは無料で手に入るようになり、一般家庭では新聞に月数千円の支払いをすることをためらうようになったのです。  情報の取得単価が下がって新聞社の経営が傾いたのであれば、資本主義の原理として淘汰されるのが自然だと考えるかもしれません。  しかし、新聞社は世界中に築いたネットワークを武器に、正確性の高い情報を発信しています。社会的な価値が極めて高いのです。自民党の裏金問題で、特ダネを次々と明るみに出したのはやはり新聞社でした。  新聞通信調査会は世代別にメディアの信頼度を調査しています(「メディアに関する全国世論調査」)。それによると、18歳から40代までで、最も信頼するメディアとして挙がったのが新聞でした。50代以上はNHKテレビと回答しています。  新聞を購読しているのはシルバー層ですが、意外にも若い世代に信頼されてもいるのです。この調査を見ると、インターネットに慣れ親しんでいる世代ほど、新聞への信頼度が高く、価値ある存在であると認知されていることがわかります。
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将来的には経営統合による効率化が必要に?
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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