更新日:2024年07月31日 16:47
エンタメ

「今からでも観たい夏ドラマ」BEST5。『ブラックペアン2』は5位、『笑うマトリョーシカ』は3位

③TBS『笑うマトリョーシカ』

(金曜午後10時)
笑うマトリョーシカ

番組公式HPより

 謎が謎を呼ぶ社会派サスペンス。原作が早見和真氏(47)による同名人気小説だけあって、ストーリーに力がある。先の展開が読めない。欧米のドラマに近い。  主人公の東都新聞記者・道上香苗(水川あさみ)が若き厚生労働相・清家一郞(櫻井翔)の高校時代について取材したところ、生徒会長だった清家には鈴木俊哉(玉山鉄二)というブレーン役の同級生がいたことを知る。現在、鈴木は清家の秘書になっていた。  道上は清家にインタビューする機会を得る。ところが、妙なことに清家には主体性が感じられない。すべて誰の指示に従っているようだ。アドルフ・ヒトラーに演説法などを指導したエリック・ヤン・ハヌッセンのような存在である。  道上は鈴木が清家を操っていると考えた。だが、鈴木は何者かに命を狙われ、車で跳ねられる。次に道上は清家の大学時代の恋人・三好美和子(田辺桃子)が黒幕と考えた。しかし、三好美和子は偽名である上、失踪していた。  怪しいのは鈴木がその存在を恐れ、美和子を嫌っていた清家の母親・浩子(高岡早紀)である。しかし、まだ真相は分からない。実は清家が周囲を操っている可能性もある。  カギを握るのは清家が社会的弱者の救済に異様なくらい熱心なこと。主体性のない男が、弱者救済について語るときだけ顔を上気させる。物語の謎を解くカギだろう。奥深い物語である。

②フジテレビ「新宿野戦病院」

(水曜午後10時)
新宿野戦病院

番組公式HPより

 脚本はクドカンこと宮藤官九郎氏(54)。クドカンが得意とする抱腹絶倒の社会派ドラマである。  全編から透けて見えるテーマは共生。そう考えると、東京・新宿歌舞伎町が舞台に選ばれた理由も分かる。さまざまな人が日本中から集まり、外国人も多く、それでいて誰も差別されない。この街のボロ病院を中心に物語は展開する。  主人公の1人は元軍医で米国籍のヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)。英語と岡山弁をちゃんぽんで使う。エネルギッシュな女性だ。ここで気付く。ヨウコは歌舞伎町の混沌と活気を象徴しているのである。  もう1人の主人公で美容皮膚科医の高峰享(仲野太賀)は、金にならない患者には見向きもしなかった。しかし、ヨウコが不法滞在の外国人も老ヤクザも分け隔てなく治療するのを見て、変わり始めている。  患者は世間から冷ややかな目で見られている人ばかりだが、ヨウコに偏見はない。それは私生活でも同じ。世間が冷ややかな眼差しを向けるトー横キッズの少女たちと歌舞伎町の「ラーメン二郎」に行き、「うんめぇ!」と声を上げる。  クドカンらしいヒューマニズムが散りばめられている。
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幸福と家族が切り離せない一家の物語
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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