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生活保護家庭“夏休み”のリアル。酷暑でもエアコンは「極力使いません」ズボンは穴が開いても買い替えられず

家族旅行や習い事など体験の格差は広がる一方

酷暑ルポ 貧困家庭[地獄の夏休み]

生活保護の受給証。保護費があっても生活はギリギリだ

子供たちは夏休みをどう過ごしているのだろうか。 「子供たちが友人と遊べないですね。こっちは車社会ですが、誘われても私には車がないので。『乗せてって』と気軽に頼めるママ友はいないので諦めました。子供はたまに『ディズニーランドに行きたい』とか言いますが、『そのうちね』とごまかしています。遠出するのも電車代がかかるし、習い事もしていないので、鉄道系のスタンプラリーが精いっぱいです。あとは近所の公園に行って走り回ったり、家のお風呂に水を張ってプール代わりにし、100均の水鉄砲で遊ばせたりしています」 現在の境遇についてどう感じているかを尋ねた。 「生活は苦しいですが、貧困でかわいそうねと思ってほしいわけじゃない。お金を使わなくても幸せに暮らせるといいと思う。でも、自分たちが体験したいことを気兼ねなくできるようにはなりたい」 4月に発売された『体験格差』(講談社現代新書)がベストセラーとなっている。行政や民間の支援で、飢える家族は激減したが、家族旅行や習い事などの体験の格差は広がる一方だ。

「夏休み」が子供のメンタルに大きく影響

悩みを抱える人たちからの相談が1日1500件寄せられ、うち3割強が10代の子供たちだというNPO「あなたのいばしょ」代表・大空幸星氏に話を聞いた。 「夏休みの終わりや新学期にかけて相談件数が増加しますが、それは子供たちが夏休みを通してゆとりがなくなり、死にたくなってしまうから。子供たちのメンタルを考えるとき、夏休みをいかに充実して過ごせるかが大きな問題です。友達は家族と旅行ができる、でも自分は行けないという苦しみが、新学期の精神状態に影響するのです」 夏休み問題や体験格差は確かに存在する。しかし、子供たちを「かわいそう」という視点でくくることは、問題の本質を見えにくくしていると大空氏は指摘する。 「貧困家庭に生まれた子供がかわいそうというスティグマは、当事者の『自分らしく生きていきたい』感情を押しつぶしてしまいます。泣いている子供の写真を使えば寄付は集まりやすくなりますが、非支援者と支援者の対立も強化されてしまいます」 次世代を担う子供達が豊かな経験を育み、成長していくためには何が必要なのか。私たち親世代は考えるべきだ。 取材・文・撮影/中山美里(オフィスキング) 山口晃平 写真/PIXTA
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