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「ラッコやイルカ」とは違った魅力が。“国際的にも希少”な海獣マナティーの“楽しみ方”

「みらい」は日本唯一のアフリカマナティーに

筆者は最近、『ラッコBOOK』という本を書き、鳥羽水族館の飼育員だった道瀬忠利さんに写真を撮ってもらいました。「かなたが痩せちゃって心配ですね」「ラッコもそうですが、元気なうちにたくさん見ておかなければ」と盛り上がった翌月の死亡報告だったので、とても残念です。 国内1頭だけのアフリカマナティーとなった「みらい」は、2010年に来館時に2歳と推定され、2024年現在では推定16歳ということに。『海生哺乳類大全』(緑書房)では、「野生では最高齢17歳の個体が確認されて、飼育下では70年ほど生きる」と記載されています。まだまだ長生きしてくれることを願うばかりです!

魅力たっぷりのマナティー観察のコツ

マナティーの魅力を予習しておきましょう。 第一はなんといっても、ゆったりとした動きです。イルカのように素早く泳いだり、華麗にジャンプしたりすることはなく、またラッコのようにせかせかとグルーミングや食事にいそしむこともありません。 いつでもおっとり動き、安心感と包容力を漂わせ、姿を見ているだけで心が落ち着きます。この「スローライフ」を体現したような動きこそが、マナティーの最大の魅力の一つです。動きがスローすぎて体にコケが生えてしまうことがありますが、みらいは、水槽の壁や底に体をこすりつけてクリーニングする行動を見せることがあるそうです。知性と適応力を示す興味深い行動ですね。 次に、完全な草食動物であることです。あの巨大な体は、ほかの動物を捕食することなく、水草を含む水生植物だけを食べることで維持しています。水族館では牧草やキャベツなどをエサとして与えており、それらを前あしで持ち、口元に持っていき食べる様子も上品で優雅です。 これらの平和な習性が裏目に出て、生息地でボートのスクリューに巻き込まれてケガをすることもあります。特にアメリカ・フロリダ州で多くのマナティーが船との衝突で落命したことが報告されています。 前述の道瀬さんは、フロリダ州でマナティーのすむ泉に潜ったことがあるそうです。「人に傷つけられているのに怖がる様子を見せず、向こうから寄ってくるんです。好奇心旺盛で愛嬌があり、ヒゲもじゃで優しい顔が大好きです。かなたは若い頃は立派な体格でしたが、痩せてきたらナウシカのユパ様のようになり、私と似ているなんて言われていたんですよ」と思い出を語ってくれました。
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マナティーの姿は「調和と共生の象徴」
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フリーの編集者・ライター。出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」を創業。実用書やガイドブックの企画・編集を行う傍らで、Webライターとしても活動。飲食・日本文化・占い・農業など、あらゆることに興味があるが、生き物が大好きすぎて本も書く。『日本で会えるペンギン全12種パーフェクトBOOK』、『ラッコBOOK』を執筆。

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