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2024年夏ドラマは終盤戦に突入「最後まで見逃したくない作品」5選

NHK「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」

(火曜午後10時)  ホームドラマの進化形。家族とは何か、幸せとは何かを考えさせる。それでいて説教臭いところは微塵もなく、何度も笑わせてくれる。  主人公は岸本七実(河合優実)。第1回の時点では高校3年だった。父親・耕助(錦戸亮)は急性心筋梗塞で他界しているが、現在に至るまで画面に登場する。耕助には家族を残して逝くことに強い未練があったし、七実たちも死んでほしくなかったからだ。結び付きの強い家族であることが分かる。  母親・ひとみ(坂井真紀)は明るい女性で、整体院で働いて七実とその弟・草太(吉田葵)を育てていた。草太も明朗で素直だったものの、ダウン症というハンデがあった。  1人親家庭で、草太にハンデがあるため、周囲には岸本家を「かわいそうだ」と考える向きもあった。もっとも、当の岸本家にそんな意識はサラサラない。仲良く幸せに暮らしていた。  幸不幸は家庭の経済状況や家族のハンデで決まるものではない。ましてや他人が判断することではない。このドラマはそれを教えてくれる。

七実がみせた“強さ”とは

 その後、ひとみは大動脈解離で倒れ、車椅子での生活になる。この時点まで七実は大学に興味のなかったものの、一転して進学を決意する。ひとみの車椅子を押して街に出た際、カフェに入ろうとしたら、入口に段差があったために断念し、道行く人も冷淡だったからだ。  みじめな気持ちになった母娘は人目を憚らず泣いた。七実は「ママ、一緒に死のうか」と言った。しかし、七実は強い女性で、こう付け加えた。「ちょっと時間頂戴。ママが生きていたいと思うようにするから」。そのためにはどうすればいいのか。出した答えが進学だった。選んだ学部は人間福祉学部である。 「やさしい社会にして、あのカフェの入口の段差、ぶっ潰す!」  七実は大学内でバリアフリー社会の実現に向けたベンチャー企業「ルーペ」に入る。同社側がホームページづくりを望んでいたので、七実は「つくれます!」と言った。大ウソである。やはり強い人なのである。13日放送の第4回だった。  しかし、スーパーウーマンではないから、20日放送の第5回ではミスを連発。経費の精算をしなかったのは序の口で、ウィルスに感染したメールを盛大に拡散してしまう。信用は地の底まで落ちた。  失敗する七実も愉快だが、このままでは終わらないだろう。ひとみ、草太、そして祖母・大川芳子 (美保純) はずっと温かく見守ってくれている。家族の支えは大きい。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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