恋愛・結婚

定年退職の日に帰宅したら“離婚届と置き手紙”が…夫が妻から受けた「哀しすぎる報告」

タクシーに乗り真夜中の東名で妻の元へ

高速道路 美咲さんからの手紙を読んだ中村さんは、しばらく床に平伏し嗚咽したといいます。その後、美咲さんの所在を探しました。 「今更遅いのですが、仕事にかこつけて家庭を顧みなかった自分が情けなくてしょうがありませんでした。美咲のことを気にかけていれば、体調の悪化も見抜けたでしょうし、一緒に病院にも行けたと思います」  中村さんは、とにかく美咲さんに会いたい一心で居場所を突き止めようといろいろ考えました。実は以前も一度だけ派手な夫婦げんかをした時に、何も告げずに実家のある静岡県の沼津に帰っていたので、中村さんは今回もそうだろうと確信。酒が入っていたのですぐにタクシーを呼び、真夜中の東名で沼津に向かいました。

退職金のすべてを妻の治療に充てると決意

 明け方に美咲さんの実家に到着した中村さんは、妻の実家のチャイムを鳴らしました。 「中から美咲の姉が出てきました。姉は事情を知っているのか、私の顔を見ても驚く気配は見せず、美咲が入院している病院を書いたメモを渡してくれました。明け方に行っても迷惑なので仮眠をとらせてもらい、9時ごろに家を出ました」  中村さんは、美咲さんの実家から30分ほどの大学病院まで急ぎました。あっという間に病院に到着した中村さんですが、ちょうど主治医の回診などがあり、しばらく待合室で待つことになりました。 「もう、早く会いたくてたまりませんでした。しばらくして、担当の看護師さんが呼びにきてくれ、私は急足で美咲が入院している4人部屋に入りました。ゆっくりとカーテンを開けると、なんだか寂しそうな美咲が横になっていました。私は無言で手を握り、声を殺して涙を流しました」  美咲さんの治療は始まったばかりで、まだこの先の状況はわかりませんが、中村さんは、退職金の全てを積極的な治療にあてたいことを美咲さんに伝えたといいます。 「何かが解決したわけではありませんが、美咲の病気に対して、一緒に立ち向かってよいかと尋ねると、静かにうなずいてくれました。私はうれしくてしょうがありませんでした。この先、美咲の余命がどの程度なのかは分かりませんが、今までの人生で一番濃い時間をともに過ごしたいと思います」 <TEXT/ベルクちゃん>
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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