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最高球速110キロの「平凡なピッチャー」がドラフトで指名されるまで。「球速を上げてくれる」人物との出会いが転機に

「第二の故郷」新潟のファンのためにも…

下川隼佑

(左から)橋上秀樹監督、下川投手、池田拓史球団社長

10月24日のドラフト当日、育成指名の3巡目に入り、ヤクルトの番になると下川の名前と所属先が読み上げられる。19時58分、ドラフトが開始されてから3時間以上が経過していた。 「指名が決まった瞬間、野間口(貴彦・オイシックスチーム強化アドバイザー兼ヘッドコーチ)さんと握手をしました」と後の会見で語った下川。指名から5分も経たないうちに、新潟日報メディアシップの1階のパブリックビューイングでドラフトの中継を見ていたオイシックスのファン80人近くが集まる場に下川が登場すると、大きな歓声が上がった。 その後、同ビルの20階で記者会見が行われた際、橋上監督はこう後押しした。 「クライマックスシリーズでは、横浜(DeNAベイスターズ)の中川投手がアンダーハンドのピッチャーとしていい投球をしていました。アンダーハンドが少なくなっているなかで使えるんじゃないかと。ヤクルトの高津監督も同じタイプなので、下川にとってはプラスの要素になるんじゃないかと思います」 6月のインタビューの最後に、下川はこう締めくくった。 「新潟は僕にとって大きく成長させてくれた場所でもあり、第二の故郷なんです。温かく見守ってくれて応援し続けてくれた新潟のファンのみなさんのためにも、この先NPBの一軍の舞台に立つことができたら、臆することなく勝負に挑みたいと思っています」 「どこにでもいる平凡なピッチャー」が、NPBの世界に入ってこの先どう飛躍していくのか。下川のサクセスストーリーはまだまだ続いていく。 <取材・文・撮影/小山宣宏>
スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』(双葉社)
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