無職になったら道の駅へ“エア出勤”。夕方まで読書に没頭
富士山が綺麗に見える
――いきなり大変な状況になりましたね。
マーシー:その前から実家では肩身が狭く、無職なのに仕事行くフリして、富士山が綺麗に見える道の駅で時間を潰す“エア出勤”とかもよくしていました。
――エア出勤中に見る富士山って、めちゃめちゃ心に沁みそうですね。
マーシー:そこで夕方まで読書に没頭したり、人間観察したり。山梨との県境にある道の駅なので、監視の目も緩いというか。知り合いに会うこともないので落ち着くんです。
――まるで自分が犯罪者みたいな物言いですけど(笑)。
マーシー:実際、30過ぎのおじさんが昼間の公園や駐車場に車を駐めて本とか読んでいると、警官に職務質問されるんですよ。別にいいんですけど、煩わしくて。道の駅でダラダラするようになりましたね。実家を出た今も仕事をバックレた朝などは、道の駅へ行くことが多いです。
――マーシーさんとしては毎回、あくまでも長く働くつもりで仕事探しをしているんですか?
マーシー:季節雇用なども含めて“採用されやすい”という理由で働いた職場もたくさんありますが、雇用形態を問わず、とにかく“自分が続けられそう”という基準で基本的には探していますよ。
――“自分が続けられそう”で選んだはずなのに、どうしてそんなにすぐ辞めちゃうんですか? なんか詰問みたいになってスミマセン(笑)。
マーシー:仕事を辞める一番の理由は職場の人間関係みたいな感じですかね。少しキツいことを言われたらすぐ心が折れちゃうし、なんとなく仕事に行くのが憂鬱で怠くて辞めることも多いです。どうしても隣の芝が青く見えて、他の会社に移ったほうが良い人間関係を築けるのではないか、といった判断から転職し続けている。完全に“負のスパイラル”に陥っておりますね。
――静岡の地元がずっと拠点だと、“すぐに仕事を辞める人”として、マーシーさんの噂が広まってしまうのでは?
マーシー:派遣の営業さんの間で、情報交換されている可能性は全然ありますね。自分のYouTubeチャンネルが知られていることも過去にはありました。これまで30〜40社の派遣会社を利用してきたんですが、事実として一番長く続いた仕事がせいぜい半年ほどなので、そうした情報が界隈で出回っても仕方ないことだと受け入れています。
――では、仕事探しに支障をきたすようなことも?
マーシー:意外とそれはないですね。職場をバックレた派遣会社からも普通にお仕事紹介の電話がきますし、むしろ最近は非常に採用されやすいです。人手不足とはいえ、よく自分みたいな人間に仕事を紹介するなと。派遣業界も人手が余程足りないのかなって心配になるレベルです。体力が必要な肉体労働は年齢が上がるほど採用されにくく、40歳以上は雇わないということで断られたことも何度かありますが、それも会社の考え方やタイミング次第です。
――特に人手不足を肌で感じる業界は?
マーシー:運送業界はこの1年で7社受けて、5社は面接の場ですぐに正社員として採用していただきました。なので、運送業界は人手が相当足りていない印象です。
――いろんな経験を経てきたせいか、マーシーさんはすごく落ち着いている印象があるんですが、将来の不安って若い頃のほうがありましたか?
マーシー:20代の頃は、結婚とか将来への希望があったので、30歳になるまでに自分の足場を固めるつもりでいました。ただ、その裏返しで焦燥感や危機感も大きかったです。でも、30代後半くらいになると、もう諦めの気持ちが強くなりました。
――孔子も“四十にして惑わず”と言っていますが。
マーシー:まだ30歳手前までは、“いつか自分に合った職場が見つかるだろう”って思っていたんですけどね。今は、とりあえず息していればいいかなと……。
<取材・文/伊藤綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):
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