スーパーホテル支配人「2人で年収4000万円」の“秘密”とは? 夫婦・カップルで1店舗を運営、住み込みだから貯金も効率的に
“ホテルを超えるホテル”を目指し、既存のホテルの枠を超えた取り組みを行う「スーパーホテル」。
フロントでの鍵の受け渡しや返却が不要の「ノーキー・ノーチェックアウトシステム」や、“快眠”をサポートする8種類の枕の貸し出し、客室の蛇口から出る「健康イオン水」など、他のホテルにはない独自の付加価値を追求してきた。
なかでもユニークなのが「ベンチャー支配人制度(Super Dream Project)」だ。夫婦やカップル、友人といったペアでホテル運営に携わり、経営ノウハウの習得と資金の貯蓄を両立させ、将来の起業を応援するプロジェクトになっている。
この制度にチャレンジする2人1組のペアは、1年契約の業務委託契約書を締結し、4年で2,000万円近くの貯金も可能になるという(報酬や貯蓄金額には個人差あり)。
今回は、株式会社スーパーホテル 代表取締役社長の山本健策さんに、既成概念にとらわれないスーパーホテルの独自性を貫いた戦略について話を伺った。
スーパーホテルは、1996年に1号店を福岡に開業して以来、約30年間にわたってホテル事業を展開。現在は全国に173店舗(2025年4月時点)を構える規模に成長した。
事業の立ち上げ当初、ビジネスホテルの相場は1泊7,000〜8,000円ほどだったのに対し、スーパーホテルは1泊4,980円で朝食付きという“価格破壊”のプランを打ち出し、シェアを獲得していく。
しかし、店舗数が20店舗規模にまで拡大したタイミングで、稼働率が80%前後で頭打ちになり、伸び悩んでいたという。
そんななかで、創業当時から導入していた「自動チェックイン機」による省人化のメリットを活かし、顧客満足度の向上を図るための“おもてなし”を重視する戦略へシフトさせたと山本さんは話す。
「顧客満足度を高めるために、単にホテル運営や人材育成の仕組みを作るのではなく、それがしっかりと現場で運用され、スタッフたちの業務が成果につながっているかどうかを“見える化”することを意識していました。
組織において『仕組みの浸透』と『理念の浸透』を並行して実施していきながら、スタッフのモチベーション向上へと繋げ、結果として顧客満足度の向上へとつながるというサイクルを生み出せるように取り組んできたのです」(山本さん、以下同)
また、「ホテルを超えるホテル」を目指すスーパーホテルの名前にある“スーパー”には、「どこよりもぐっすり眠れるホテルを目指す」という想いも込められているそうだ。
シャンデリアのある空間や特別なディナーなど、非日常のラグジュアリーを追求する「20世紀型のホテル」は、見た目の華やかさや豪華さを演出するものだった。
一方、スーパーホテルの考える「21世紀型のホテル」は、“日常の中で感じるラグジュアリー”を掲げているという。
「省資源・省エネルギーの取り組みを通じて環境に配慮した空間づくりを意識しているほか、オーガニックな食事や天然温泉を提供し、五感を通して“心地よさ”や“癒し”を届けることを心がけています。お客様がぐっすりと眠れ、心身ともにリフレッシュして『また来たい』と思ってもらえる、そんなホテルづくりを進めてきました」
さらに、コロナ禍を機に「ビジネスホテル」から「ライフスタイルホテル」へとブランドの転換を図り、多様なライフスタイルやニーズに対応した宿泊体験を提供する体制を構築してきたと山本さんは述べる。
以前は出張を中心としたビジネスユーザーが主なターゲット層だったが、コロナによるリモートワークの進展によって、出張需要が大きく減少した。その代わりに、ファミリー層やインバウンド、女性同士の旅行といった新しい客層が増えているという。
「コロナによる外出自粛の影響で、外食を控える方が増えていたため、当社では朝食で使用していたスペースを夕方限定で「ウェルカムバー」として無料開放しました。アルコールやカクテル、ソフトドリンクを自由に楽しめる場を提供することで、ファミリー層や地域住民にもご利用いただけるようになり、新たな顧客層の獲得にもつながりました。
また、ユニークな取り組みとして話題になったのが、『ビジホ飲み』の施策です。当時、都内で一人暮らしをしている女性の間で、『仕事終わりにビジネスホテルでゆっくりお酒を楽しむ』という過ごし方がSNSで注目を集めていました。そこに着目し、スーパーホテルで『ビジホ飲み』を発信してもらうためにインフルエンサーを起用したプロモーションを実施したところ、多くの反響が生まれ、全国的な広がりを見せたのです」

スーパーホテルの外観(写真は今治)

スーパーホテル内には、快眠をサポートするために高さと硬さが異なる8種類の枕が用意されている

スーパーホテルのベンチャー支配人制度(Super Dream Project)

株式会社スーパーホテル代表取締役社長の山本健策さん
省人化と理念浸透でホテル改革を推進

自動チェックイン機
日常の癒やしや安らぎを届ける“21世紀型のホテル”を目指す

スーパーホテルの天然温泉

コロナ禍で導入した「ウェルカムバー」の施策
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
記事一覧へ
記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】
スーパーホテル支配人「2人で年収4000万円」の“秘密”とは? 夫婦・カップルで1店舗を運営、住み込みだから貯金も効率的に
「このベッド濡れてない?」ホテルの部屋が“清掃前”だったが…“フロントの神対応”で最低な気分が一転
「もう東京のホテルには泊まれない」出張する会社員の悲鳴。空港ロビーやカーシェアに寝泊まり、野宿する人まで
“ホテル高すぎ”問題はいつまで続くのか?「もう泊まりの出張は消滅するかも」
ビジネスホテルでポイ活!年間300泊するホテル評論家がお得に泊まる方法を徹底解説
この記者は、他にもこんな記事を書いています