ライフ

研修4日目で「新入社員の母親」が会社に乗り込んできた。手作り弁当を「食べずに持ち帰った」から「いじめられている」と主張…

新年度から2か月。そろそろ新人の素顔が見えてくる時期だ。 「思っていたのと違った」と言わんばかりに退職代行で姿を消す新人もいれば、社内に爪痕だけを残して去っていく者もいる。だが、それだけではない。一昔前では考えられなかった、想像の斜め上をいくニュータイプも登場しているという。 「毎年いろいろな子がいるとは覚悟してるんですが、今年は特にすごかったです」 そう話すのは、都内のIT企業で人事を担当する浜野貴弘さん(仮名・38歳)。社員数300人ほどの中堅企業で、採用から研修、定着支援まで幅広く手がけている。そんな浜野さんが「忘れられない」と語る新人がいる。
50代女性

画像はイメージです

新入社員の母親が受付で怒鳴っていた

「うちは入社してから1か月間が研修期間なんですが、その4日目でした。研修中に突然、受付から内線が入ったんです。『今本さんという新入社員はいらっしゃいますか?』と」 受付の声は震えており、電話の奥では女性の怒鳴り声がかすかに聞こえたという。 「直感で、これは何かトラブルだなと感じました」 受付に向かうと、そこには五十代くらいの女性が立っていた。受付の社員が言う。 「浜野さん、こちら今本さんのご家族の方です」 浜野さんが軽く会釈すると、その女性は開口一番、こう言い放った。 「うちの息子が陰湿ないじめに遭っているようで!」

手作りの弁当を「食べずに持ち帰る」のは異常事態?

「正直、何のことかまったく分かりませんでした」と浜野さんは振り返る。 研修はまだ4日目。内容も社内見学やレクリエーション、座学といった穏やかなものばかりで、いじめが起こるような環境ではなかった。 だが、もしかすると見えていないところで何かあったのかもしれない、そう考え、浜野さんは詳しく話を聞くことにした。しかし、その「いじめ」は、浜野さんの想像を大きく裏切るものだった。 「お弁当だったんです」と浜野さんは苦笑する。 母親が毎朝作って持たせていた手作り弁当を、息子が3日連続で食べずに持ち帰っていた。それを見た母親は、「何か指導を受けたのでは」「いじめられているのでは」と考え、会社に直接怒鳴り込んできたのだった。 「うちは研修期間中、昼食として会社が弁当を支給しているんです。それを食べるかどうかは個人の自由ですが、ほとんどの社員がその弁当を食べていました。今本さんもそうでした。でも、たぶん、最初からお母様が毎日お弁当を持たせていたんでしょう。それを食べずに持ち帰った。それが異常事態だと受け取られてしまったようです」
次のページ
「恥ずかしかったのではないか」とは言えず…
1
2
【関連キーワードから記事を探す】