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青酸化合物、鉛、ヒ素etc.団地の地下に何種類もの有害物質

産業で汚染された土地が、浄化処理をされずそのまま宅地造成されたというケースが問題になっている。多くの住民は汚染の事実を知らずに住宅を買い、調査や補償も十分にされないまま、今でも土壌汚染や地下汚染の被害に苦しんでいる。日本には、こうした土壌汚染の可能性のある場所が、なんと93万か所もあるという! そんな”土壌汚染列島”ニッポンの実態をリポートする。

小鳥が丘(岡山県)
青酸化合物、鉛、ヒ素etc.団地の地下に何種類もの有害物質

 団地内に一歩足を踏み入れると、甘ったるい異臭が漂ってくる。ここは、岡山市の小鳥が丘団地(34戸約120人)。地面の数か所に、調査用の直径5cmほどの穴が開けられている。そのフタを取りながら、「小鳥が丘団地救済協議会」の藤原康さんが「どうぞ」とにおいをかぐよう促してきた。ゴマ油が腐ったような悪臭が鼻をつく。

 この団地の住民、岩野敏幸さん宅に立ち寄ると、藤原さんが庭先をスコップで掘り始めた。すると、数十センチ掘っただけで、強烈な悪臭のする真っ黒な土が現れた。

「ここで僕は倒れたんです」
 
 ’06年10月、岩野さんは庭をスコップで掘っているときに意識を失い、気づいたら病院にいたという。救急車を呼んだのは藤原さんだった。医師は「亜硫酸ガス中毒」と診断した。

「ウチではときどき、台所を使ってもいないのにガス警報器が鳴ります。雨が降れば、地下からのガスと油でブクブクと気泡が出ているのもよく目にします」

 また、団地内の塀や地面には、亀裂やゆがみを修繕した跡を目にすることができる。

 においと亀裂の発生源を住民が知ったのは’04年7月。水道工事の際、大量の真っ黒い土と油が出てきたのだ。岡山市と、団地を分譲した旧「両備バス」(現「両備ホールディングス」)の調査で、環境基準値の30倍近いトリクロロエチレンやベンゼンによる地下水汚染が判明した。

「それで合点がいきました。’93年の入居以降、妻と娘はアトピーと慢性頭痛、息子と僕は慢性鼻炎に悩んでいたんです」(岩野さん)

 翌8月、岡山市が団地住民への健康相談を実施すると、相談に訪れた65人中42人が皮膚炎、鼻炎、頭痛などを訴えた。

◆住民は汚染の経緯を知らされていなかった

 汚染の原因は、’67年から廃油を原料に石鹸を製造していた旭油化工業という会社が、土中に垂れ流した産廃だった。同社は’82年に操業を停止し、その跡地に小鳥が丘団地が造成された。しかし、なぜ産廃の上に団地を造ることが許されたのだろうか?

「両備は’82年に土地を買い取る際、旭油化が産廃を撤去するとの和解を交わしているんです。そして’83年、岡山県は『撤去を確認した』と宅地開発許可を出し、両備も『もう汚染はないと認識した』との立場で、’87年から分譲を開始しました。でも、みんなウソでした。旭油化は撤去していなかった。県は土の上を目視で確認しただけ。両備も汚染の経緯を購入者に説明してこなかった。つまり、僕たちは三者に騙されたんです」(岩野さん)

 住民の不安が高まったため、両備は「環境対策検討委員会」を設置して調査を約束した。しかし、審議は非公開で議事録閲覧不可。たった3回の審議で出された2ページの意見書は「健康への影響は懸念されない」というものだった。また、岡山市も土壌調査をしてほしいとの訴えを無視し続けてきた。土壌調査をしない理由を岡山市に尋ねると、「理由と言われましても……必要がないからです」(環境保全課)と答えた。

 不安をぬぐえない住民たちは、岩野さんが倒れた翌年、民間の調査会社に依頼して岩野さん宅の土壌検査を実施した。

「青酸化合物、環境基準値を超える鉛とヒ素が検出されました。ウチだけではなく、全世帯の調査が必要です。こんな土地、早く引っ越したいとは思いますよ。でも、何千万円も払って買った住宅の資産価値が、今やゼロ。買い替えもできない。銀行はここの住宅を担保に融資なんかしてくれません」(同)

 現在、岩野さんたちは両備を相手取って損害賠償請求中。しかし、両備の主張は「分譲時に汚染の認識はなかった」と、裁判は平行線をたどっている。

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団地内の数か所に開けられた調査用の
穴のなかでは、地下水に油膜が張り、
異臭を放つガスで泡立っていた


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岩野さん宅の庭をスコップで掘ると、すぐに真っ黒に油ぎった
土が現れた(右)。小鳥が丘団地に隣接する川には、雨が降る
と排水溝から真っ黒な液体が流れ込む(左)


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産廃のために水道管が腐食して水道水
が汚染され、沢水を汲み集めて暮らす家族も


― 住宅地の土壌汚染がヤバすぎる!【2】 ―




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