更新日:2025年09月04日 18:36
スポーツ

「大谷ファンの高齢者にとっては絶望的」WBCの“Netflix独占配信”で失われる「スポーツ観戦の熱狂と一体感」

 Netflixが来年行われるWBCの独占放映権を獲得した。日本国内では同社が全47試合を独占で配信し、過去5大会で放送してきた地上波では視聴不可能になったことが決定的となり、波紋を広げている。

民放無料放送が築いたWBC人気の歴史

 大金を払ったメディアが、大会を独占するのは仕方ないことかもしれない。しかし、WBCは民放の無料放送によって人気を獲得してきた。  もっと言えば日本野球それ自体は、放送メディアと一蓮托生の長い歴史によって、現在の人気と実力を培ったコンテンツだ。それをいきなり独占されるのは、苦労して築いたものを持っていかれるような感じがしてしまう。  放映権料は、前大会の30億円から5倍となる150億円に引き上げられたと報じられている。オリンピックが夏季冬季2大会合わせて440億円というから、単独競技の国際大会としては莫大な金額だ。  WBCの人気は日本だけであり、足元を見られて高い放映権料を設定されたことは、民衆によって長い時間をかけて作り上げられた文化の搾取のようにも思える。  WBC自体は新興のコンテンツであるが、それに出場する、優秀な日本人選手たちは、日本の社会が長い時間育み続けた「野球愛」によって誕生したといえるだろう。もちろん大谷翔平も然りだ。

有料独占配信がスポーツ文化を衰退させる?

 イギリスには「ユニバーサルアクセス権」に基づき、国民の関心が高いスポーツは無料放送しなければならない法律があると言う。ユニバーサルアクセス権とは、誰もが自由に情報にアクセスできる権利のことを指す。人気スポーツの独占放送を否定する根拠を既に認めている国もある。  人気と歴史が既に備わっているスポーツを有料配信で独占してしまうことは、タコが生きるために自分の足を食べているようにも思える。つまり、短期的には利益が出ても、長期的には自らの資産を食いつぶしてしまう行為といえるだろう。  また、現在のサッカー日本代表は歴代最強のメンバーだと個人的に思うが、国民の注目は昔ほどではないように感じる。それはワールドカップ予選の有料放送が影響しているのではないだろうか。  世間を巻き込む努力をせずに、ファンだけを相手にしていたら、スポーツは必ずしぼんでいってしまう。ビジネスの論理だけを優先してしまえば、貴重な文化の源泉を枯れさせてまうかもしれない。
次のページ
お年寄りにとって有料放送は「おっかない」
1
2
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』、週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』などを担当。近著は『オールナイトロング -私にとっての電気グルーヴのオールナイトニッポンとその時代』。Xアカウント @mo_shiina

記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】