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何をもって勝ちなのかよくわからない。あまりに奥深すぎる空手競技を楽しむためのコツ

~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第58回~ ※前回の話…スポーツ好きブロガーのフモフモ編集長が、東京五輪でチケットが買えそうな穴場競技探訪へと出かけました。今回のターゲットは「空手」。過去に一度視察したが、東京五輪の追加種目に決定したということで、あらためて国内最高峰の大会を観戦に訪れた。しかし、五輪効果もあってか会場は満員御礼、選手にはファンが群がるほどの熱気あふれる様子に穴場感はゼロ。さらに「形」競技ルールのわかりづらさが、フモフモ編集長を悩ませるのであった……

素人には難しすぎる「形」の採点基準

 そもそも、何をもって勝ちとするのかよくわからない。公式パンフレットには 「流派で継承されている形を演武し、その練度、正確さ、緩急、その他の諸要素を総合的に競う」 とあります。  伝統競技にありがちな「俺たちはわかっている。わからない者はわからなくて結構」という匂いがプンプンしてくる基準です。「いいね!」がいっぱいついたほうが勝ち、みたいなフワーッとした戦いなのでしょう。  そんな採点種目であるにもかかわらず、形競技の試合は「1対1」のトーナメント形式です。 「形の美しさで決まるなら、全員が演技をしてから、得点の高低で決めたらええんちゃうか」  という疑念が強くわき上がりますが、先ほどのフワーッとした基準だと全員の演技を見て公平に採点するのは無理な感じもするので、仕方ありません。  最初のほうがどれくらい「いいね!」だったか忘れそうですからね!

形競技はトーナメント形式で1対1で勝負をする

 試合を行なう選手は、それぞれ自分が行なう「形」を申告します。「ハッサイダイ」とか「セイパイ」とかの形の名前を大声で叫ぶのです。ただ、言い方がわりと早口の絶叫系なので聴き取るには慣れが必要です。一応、モニターに字幕も表示してあるので、そちらを見ればわかりますが、技の難易度が表示されたりするわけではないので、名前を見たところで特に何がわかるわけでもありません。門外漢への疎外感強めです。

クルルンパという技かと思ったが字幕を見たら違った……

昨年まで4連覇中の女王・清水希容さんの気迫みなぎる演武

 聞きかじったレベルで勉強をしますと、空手には無数の流派があり、それぞれに目指す理想は違うのだそうです。特に大きな派閥とされる「四大流派」においても、ダイナミックな動作が特徴の松涛館流、守りと接近戦に強い剛柔流、突きや蹴りだけでなく投げなどの多彩な動作を含む糸東流、柔術を源流として投げ技や足技が多彩な和道流など、それぞれに違いがあるのだとか。  その微妙な差みたいなものの間におそらく優劣はないのですが、解釈の違いは流派ごとにあるのだとか。相手に正対するときの立ち方ひとつとっても、どこに足を置く、どこに重心を置くといった流派ごとの思想があり、その思想に基づいた形がある。同じ突きを繰り出すにあたっても流派ごとの解釈を学び、それに基づいて繰り出さないと形としては不正確になってしまう。その正確さが、まずは「形」競技においても問われるのだと。非常に奥深い………奥深すぎてハナから置いてけぼり感満点です。  素人目線においては、跳び蹴りなどのアクロバット的な動きをしたときが、やっぱり一番盛り上がったりするものです。跳び蹴りからのカッコいい決めポーズがあると、そこがハイライトのようにドーンと盛り上がりますし、空手愛好家たちもやはりそうであろうと思うのです。跳び蹴りからの決めポーズは会場でもドーンと盛り上がりましたから。だから僕などはアクロバット的な形の演武を見ると、観衆のわき具合などから「この選手の演武はスゴかったんだな!勝ったな!」と確信するのですが、判定ではまるで逆だったりするということの繰り返し。  これが体操ならば「よりたくさんクルクル回ったほうが勝ち」という明確な基準があり、それにそって技の難易度が定められています。フィギュアスケートでもひとつひとつの技に対する得点が決まっており、出来栄えに対する得点も「こうすればもらえる」という基準がルールにおいて記載されています。しかし、空手の形競技には優劣の明確な基準が示されないうえに、観衆がドーンとわくポイントと審判員の見るポイントが一致していないというハードルの高さがありました。
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「これは東京五輪以外では受け入れられないだろうな……」
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