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女子空手の五輪メダル候補・植草歩「吉田沙保里さんのように競技の人気を高められる存在に」

 学生時代の部活帰りに「今日の練習キツかったね~」「ヤバかった~」と仲間同士で笑いあう会話は、たぶん日本全国、どこの学校でも展開されるありふれた光景だろう。しかし、植草歩は「こういうことを言ってしまっていたから、あの頃の私は最後の最後で勝ちきれなかったんだなって、いまならわかります」と語る。

~もぎたて女子アスリート最前線 第31回~

 いよいよ来年に迫った2020年の東京オリンピック。ここでメダルを期待されているのが前述した、女子空手・組手68キロ超級の植草歩だ。

 日本開催のオリンピックで、日本発祥の武術・空手の五輪正式採用。いやがうえにも注目が集まる空手競技の中で、植草の戦績は群を抜いている。全日本空手道選手権では現在4連覇と国内では敵なし。空手界のワールドリーグといわれるプレミアリーグでも2年連続年間チャンピオンに輝き、今年3連覇を目指している真っ最中。4月現在、世界空手ランキング68キロ超級でランク1位というのはダテではない。

 当然、これだけの成績を残している彼女には空手関係者でなくともメダル獲得を、それも金メダルを期待してしまう。

「皆さんの期待は嬉しいです。私も金メダルがほしいです」

 まったく臆することなく断言する彼女。金メダルを期待する人々のプレッシャーなど微塵も感じていない様子だ。

「いま私はとても注目されていますので、なおさら『優勝します。金メダルがほしいです』って言うようにしています。言った以上は実現させないと、って思ってドンドン、トレーニングするし、そうすれば自分がもっとキラキラ輝くじゃないですか」

 他のインタビュー記事などを読んでいてもそうだが、常に前向きな発言が多い彼女。「やっぱりメンタルが強いんですね」と感想を言うと、意外な答えが返ってきた。

「いえ、メンタルは強くなったんです。もともと明るい性格ではあったんですけど、悲観的な自分もいたので。だから、チャンピオンになりきれなかったんです」

順風満帆に見えた空手人生


 チャンピオンになりきれなかった時ーー。実は、いまでこそ国内外で、ほぼ無敵の彼女だが、勝てない時もあったのだ。

 そもそも小学校3年から空手を始めた植草は、その2年後には全国大会で3位入賞を果たしている天才肌。高校では全国優勝も果たし、大学も空手の名門校帝京大学に特待生として入学する。大学時代にはワールドゲームズで金メダルを獲得、世界学生選手権でも優勝など、はた目には順風満帆に見える空手人生を送っていたが、全日本選手権では勝てなかったのだ。

 なぜ、勝てないのか? 彼女は、フィジカル面はもちろん、メンタルの部分でも自分を見直してみた。すると、メンタルの指導者から思いもかけない事を言われる。

「『言葉って大事なんだよ』っていうのを言われました」

 自分が日頃、何気なく使っている言葉。それが自分の潜在意識やパフォーマンスにまで影響を与えているというのだ。

「考えてみると当時の私って『練習嫌だな』『キツイな』『やりたくないな』とか思っていたんです。練習が終わったあとも、『今日もきつかったね』とかって言ってて(苦笑)。ただ、これってふざけて言う言葉でもあるじゃないですか、仲間内で。だから、ごく普通になんの悪気もなく言っていたんです。でも、そういう言葉が自分の潜在意識に凄く影響していたんです」

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脳は主語を理解しない

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