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いまや大人気の“プロテイン”に潜んでいるリスク「将来、透析が必要になるかもと言われた」「毎日4〜5杯飲んだらしょっちゅう下痢に…」

 たるんだ体を引き締めるべくジムに通い、プロテインを相棒に筋トレに励む中年は多い。だが、そこには健康に甚大な被害をもたらす“落とし穴”が潜んでいた――。

健康のための習慣が体を蝕むトリガーになる

筋トレおじさんが[プロテイン中毒で体を壊す]の深刻な事情

ジムに通っていた頃の田中さん。「プロテインとウエア代、5万円払って腹を下しただけ。大容量タイプを買うも飲み切れず捨てました」と苦笑い

「リモートワークで体重が増え、一念発起してジムに通い始めました。インストラクターに勧められたプロテインをどうせならと5㎏入りの大容量タイプで購入。効果を早く感じたくて毎日4〜5杯は飲んでいました。ところが、次第に腐った卵のような臭いのおならが出るようになり、しょっちゅうお腹を下しては水っぽい下痢を起こすように……。結局はジムもやめ、プロテインも捨てました」  そう語るのは、SEの田中敏弘さん(仮名・48歳)。いまや体力は落ち、慢性的な疲労感に悩まされているという。  空前のプロテインブームを背景に、コンビニには専用商品が並び、インフルエンサーも開発に参入しては購買意欲を煽る。  ’24年に富士経済が発表した「タンパク補給食品の国内市場」によると、市場規模は約2700億円。しかし、その裏では田中さんのように体調不良に悩まされる人も少なくない。

体内で余ったプロテインを排出するのに腎臓を酷使!

筋トレおじさんが[プロテイン中毒で体を壊す]の深刻な事情

山中さん

 健康食品に詳しい薬草研究家の織田剛氏は、「プロテインはわざわざ摂らなくてもいいもの」と断言する。 「国が定める一日のタンパク質の推奨量は男性60g、女性50gとされていますが、そもそも人間は一日に自ら240gものタンパク質を合成できます。そこにわざわざプロテインの粉末を過剰摂取すれば、代謝しきれずにある種の中毒状態となり、さまざまな臓器に悪影響を及ぼします。体を壊しかねない」  例えば、腸への影響でいうと日本人の7割が乳糖を分解しにくい乳糖不耐性という体質。にもかかわらず、牛乳由来のホエイプロテインを摂るのはナンセンスだ。 「ホエイプロテインを摂ると乳糖が大腸に残って発酵し、有害ガスが発生。結果として下痢をはじめ、炎症性腸疾患などの腸内トラブルを招きやすくなります。最初のケースの田中さんのように、腸内環境が悪くなっておならが臭くなるのも“あるある”です」  また、アンチエイジングに詳しい医師の井上裕章氏は、腎臓への負担も強調する。 「タンパク質を過剰摂取するとアミノ酸が体内で飽和し、それを分解、排出するのに腎臓を酷使することになります。腎臓は『沈黙の臓器』と呼ばれるほど自覚症状が出にくく、慢性腎臓病につながる事例もある。負担は肝臓にも及び、高アンモニア血症や脂肪肝を引き起こす危険性も孕んでいます」
筋トレおじさんが[プロテイン中毒で体を壊す]の深刻な事情

ベンチプレスに励む山中さん。水分補給もプロテインに置き換えるほど“プロテイン中毒”に陥った

 都内で住宅メーカーに勤める山中裕治さん(仮名・50歳)は、こう肩を落とす。 「細マッチョボディに憧れ、毎日の夕食をプロテインに置き換える筋トレとダイエットを始めました。続けていくうちに筋肉が目に見えてつきはじめ、食事改善に協力してくれた妻にも『痩せたね』なんて言われてますます頑張った。ところが意気揚々と健康診断に行くと医師からは『腎機能の数値が異常。このままでは将来、透析が必要になるかもしれません』と言われました。健康になるために頑張ってきたのに……」
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ねずみの死骸や虫の混入事件も勃発
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