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「老いるとは、今を楽しむ特権を得ること」若者には不可能な老後の“幸せな生き方”とは

「老いること」を過剰にマイナスに捉えていないだろうか。体力は落ち、できないことも増えていく…。  そんな常識に対し、生物学者・池田清彦氏は『「老いる」とは、「今」を楽しむ特権を得ることだ』と異を唱える。  どうすれば幸せに老いていくことができるのか? その本質を教えてもらった。 『老いと死の流儀』書影※本記事は、池田清彦氏著『老いと死の流儀』(扶桑社新書)をもとに再構成したものです

「老いる」とは「今」を楽しむ特権を得ること

カラオケを楽しむ高齢男女

※画像はイメージです(以下同)

 若いころと同じではない体と、できる範囲の対処をしつつうまく折り合いをつけながら付き合っていく。そして、社会が強いてくる老いのプレッシャーは、適当に受け流す。  これが、幸せに老いるための基本姿勢だと私は思っています。  そして、私が考えるもう一つの大事な心がけは、「先のことはあまり考えず、今を楽しんで生きる」ということです。  考えてもみてください。ある程度の年齢になって、未来が楽しみだという人はあまりいないんじゃないでしょうか?  年を取ると「孫の成長だけが楽しみ」という言葉が口癖になる人が多いのも、自分自身の10年後、20年後が待ちきれない、という人なんていないからです。  肉体的な側面から言えば、今より老いていることは確実ですし、死んでいる可能性だってあるのですから、言ってみればお先は真っ暗なんですよ。  だから私は先のことはあまり考えません。死ぬのは別に怖くはないですが、楽しくもないことをわざわざ考える必要はないからです。

未来を憂うメリットがあるのは若者だけ

 先のことを考えない、というのは、当然リスクもあります。  たとえば若い人たちが、今が楽しければいいやと思って遊んでばかりいれば、進学や就職に支障が出るかもしれないし、その先の人生でも苦労することになるかもしれません。  だから、先が長い人ほど、未来のことを考える必要はあるし、時には「今」を犠牲にしなければならないこともあります。  もちろん、そんなことは気にせずに好きに生きたって別にいいのですが、そのぶんリスクを背負うことになるのは覚悟しなければならないでしょう。  けれども年を取ってからの未来のリスクなんてせいぜい死ぬことくらいしかありませんし、それはどうあがいたって絶対に避けられない、確実に訪れるリスクです。だからあれこれ心配したって仕方がありません。  つまり、未来を心配することにメリットがあるのは若い人だけで、嫌なことや意に沿わないことをやらざるを得なかったり、我慢したり、努力したりするのは、その先に長い未来があるからこそなのです。  逆に言えば、リスクを無視して「今を楽しく過ごす」ことができるのは、年を重ねたからこそ得られる特権でもあるんですよ。
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老後にする勉強がいちばん楽しい
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1947年、東京都生まれ。生物学者。東京教育大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学、理学博士。山梨大学教育人間科学部教授、早稲田大学国際教養学部教授を経て、現在、早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。高尾599ミュージアムの名誉館長。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。 フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』などテレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。著書に『騙されない老後』『平等バカ』『専門家の大罪』『驚きの「リアル進化論」』『老いと死の流儀』(すべて扶桑社新書)、『SDGsの大嘘』『バカの災厄』(ともに宝島社新書)、『病院に行かない生き方』(PHP新書)、『年寄りは本気だ:はみ出し日本論』(共著、新潮選書)など多数。また、『まぐまぐ』でメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』を月2回、第2・第4金曜日に配信中。

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