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トランプ政権とイーロン・マスクの“不思議な協力関係”から見える「アメリカ社会の矛盾と分断」

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写真/Alexander – stock.adobe.com

トランプとイーロン・マスク。政治の中心で物議を醸し続ける男と、テック業界を自らのペースで揺らす男。本来なら同じ文脈で論じられない二人が、いまのアメリカでは“同じ象徴”として並べて語られてしまう。片方は過去を呼び戻す声をあげ、もう一方は未来を語り続ける。まったく逆の方向を向く二人に、なぜ同じように人々が惹きつけられているのか。その背景には、アメリカ社会が長い年月の中で静かに積み重ねてきた“ズレ”と“疲れ”がある、と久保内信行氏は語る。 新書『アメリカ合理主義の限界』は、派手な事象を追いかける本ではない。むしろ、「どうしてこうした人物の言葉が届くのか」という問いから、政治・制度・SNS・労働・文化に広がる“説明の不足”と“納得の難しさ”を丁寧に拾い上げていく。強く語る人が注目され、複雑な事情が置き去りになる社会。その構造を理解すると、トランプとマスクが“時代の象徴”になった理由が見えてくる。そして著者が示す重要な視点は、こうした変化が日本にも静かに広がっているという点だ。改革疲れ、制度への不信、SNSの偏り。アメリカの問題は遠い国の話ではなく、生活の実感に近い部分にも通じる。 今回は久保内氏に、“アメリカのいま”と“日本のこれから”について聞いた。

トランプ×イーロンは、いまのアメリカの「見取り図」

――まず、なぜ入り口に“トランプ×イーロン”を置いたのでしょう? トランプとマスクは背景も立場も違うのに、どちらもアメリカを理解するための“目印”になっているからです。語る内容は真逆ですが、人々の感情を掴む力が共通している。その“掴み方”に、いまのアメリカ社会が抱える問題が表れています。二人の共闘はあっという間に崩壊しましたが、それは必然でした。 ――二人はどこが共通しているのでしょう? 端的に言えば、「今のやり方に収まらない」という点です。トランプは“昔のアメリカ”を持ち出し、マスクは“未来の理想像”を提示する。方向は正反対ですが、どちらも既存の枠の外側から語る。その語りが、人々の不満や期待と結びついたのだと思います。

「説明が足りない国」になったアメリカ

――“既存の枠”が弱くなったのはなぜですか? 政治や制度が、かつてのように“共通の納得感”を生み出せなくなっているからです。判断だけは早く下される一方で、「なぜそうなるのか」が生活者に届かない。結果として、“理由が見えないまま物事が進んでいく感覚”が広がっています。 ――それ、かなりストレスですよね。 実際、アメリカの友人と話していても、「説明されていない気がする」「気づいたらいろいろ決まっている」という言葉がよく出ます。医療や教育、働き方など、日常の多くの領域で似たことが起きており、こうした“理由の不在”が、強い語りの人を押し上げる土壌になっています。選挙や公共政策だけの問題ではなく、生活の隅々に広がる感覚なんです。
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SNSが“強い声”を増幅させる
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株式会社タブロイド代表取締役。週刊誌、月刊誌のライターを経て、現在はインターネット関連の編集、コンサルティング、運営を手がける。デジタルジャーナリストとして、デジタル分野を中心に現代社会の事象について多角的な視点から評論を行う。著書多数。12月18日に新刊『アメリカ合理主義の限界』を発売
アメリカ合理主義の限界 アメリカ合理主義の限界

行き過ぎた“自由と自己責任”の果てにあるものとは?


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