処女に対する概念は時代によって変わる
―[[処女ブーム復活]の謎]―
処女に対する概念は時代によって変わる
20代から80代までの、総勢56人の処女喪失のエピソードを集めた『だれでも一度は、処女だった。』の著者、千木良悠子氏は語る。
「かつての日本は、未婚女性の性はオープンなものでした。明治時代後半から、西洋の考え方に影響されて、処女=素晴らしい、という風潮になったんです。それが薄れ始めたのは、’70年代からですね。私が学生だった’90年代には、もはや『早く処女を捨てないとダサい』という感じでした。つまり処女という言葉自体、人や時代によって全然捉え方が違うんです」
千木良氏が取材してきたなかで特に象徴的なのが、”デリヘルに勤めているけど処女”と言い張る20代女性のエピソードだ。
「彼女は、失恋を機にデリヘルで働き始めたそうです。また『平凡な自分がコンプレックスで、特殊な経験をしてみたかった』と言っていました。私は話を聞いて、『本当にそれでいいの? デリヘルは辞めたら?』と言いました。本当はデリヘルで働くことを怖がっていたのに、その悪循環を誰も止めなかった。今は価値観が多様化しすぎて、男女ともに、性に関しても絶対的な指標がありません。反動として、そこの隙間に、”処女信仰”という一種の宗教が入り込み始めたのかもしれません」
同書を千木良氏と共著した辛酸なめ子氏も、処女信仰の復活をトレンド史の側面から解説する。
「’90年代にギャル系ファッションが隆盛を極めていた頃は、恋愛や性に積極的な風潮でした。しかし今は森ガールをはじめ、重ね着ファッションが主流。それを見て男性が『貞操を守っていそう』『ガードが堅そう』と勝手に妄想している傾向もありそうです」
つまり、女性側の処女の実態よりも、男性側の処女への認識が変わってきたということか。
「男性は見た目に騙されやすい生き物です。実際に彼氏がいても、まゆげが太くて色が白い蒼井優を処女と妄想してしまいます。黒髪で色白であれば処女、茶髪で色黒であれば非処女という具合です」
さらには、興味深いデータもある。国立社会保障・人口問題研究所による「出生動向基本調査」の「年齢別にみた、未婚者の性経験の構成比」(26ページ)という項目を見ると、’02年をピークに、18~34歳の全世代において、男性・女性ともに未婚のセックス経験者の数が減少傾向にある(最新のデータは’05年。次の調査結果発表は’11年の予定)。つまり「処女・童貞が再び増え始めている」と見ることができるのだ。
「処女信仰」とは一部の好事家だけのものではなく、現代日本を救う宗教になる……かもしれない?
【千木良悠子氏】
’78年生まれ。主な著書に辛酸なめ子との共著『だれでも一度は、処女だった。』(理論社)など。
作家以外に、女優や映画監督としても活躍
【辛酸なめ子氏】
’74年生まれ。コラムニスト。
『処女☆伝説』(洋泉社)など多数の著書を上梓。
近著に『霊道紀行』(角川書店)、『セレブマニア』(ぶんか社)
― [処女ブーム復活]の謎【4】 ―
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