更新日:2012年07月23日 17:25
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「絶対的に正しい読み」が存在しない日本語の不思議

◆漢字の読み方は常に変化・更新し続けている 日本語 漢字の読みを確認してみると、気づかずに誤用しているものが多い一方で、「誤用と思っていた読みが実は認められていた」という例も相当数あった。「誤用とされていた読みが、使う人が増えることで容認される……という例は多いんです」と話すのは、社会言語学を専門とする篠崎晃一教授。 「たとえ誤った読み方でも、大体7割の人が使うようになれば、そこでコミュニケーションは成立します。そうなると、『本来は誤用だが○○という読みでも使われる』と記載する辞書も出てきますし、さらに進行すれば、誤用だった読みを冒頭に記載する辞書も出てきます。その辞書の内容さえも時代や出版社により違うので、『絶対的に正しい読み方』というのは、実は存在しないんですよ」  さらに使用される分野、世代、地域などの違いによって、複数の異なる読みが認められる場合も。 「例えば『現世』は、仏教では『げんぜ』、一般的には『げんせ』、地質学では『げんせい』と読みます。また『施行』も、一般的な読みは『しこう』ですが、法律関係では『せこう』と読む慣例がありますね。また大安(たいあん.だいあん)のように、言葉の清濁には地域差も見られます。『大地震』は、テレビやラジオでは『おおじしん』と読まれ続けていますが、若い世代では『だいじしん』と読む人が増えていますね。メディアの読み方が世間の実態とズレている場合もあるわけです」  過去に正しいとされてきたものとは異なる、新しい漢字の読みが広まると、つい『日本語の乱れ』などと言いたくなるが、漢字の世界は日々進化しており、さまざまな読みが許容されているのだ! 「『正しい・間違っている』という線引きばかりにこだわらず、漢字の読みに“揺れ”やバラエティがあることを知ってほしいですね。 『日本語の乱れ』という言い方には、『正しい日本語はこうあるべき』という規範意識が感じられますが、そもそも何が正しい日本語なのかは、誰にも決められません。それに誤用とされる日本語でも、周囲の誰もが同じように使っていたら、自分も合わせたほうが話しやすいでしょう。正しさばかりにこだわって、対話ができなくなっては意味がないですからね(笑)」 【篠崎晃一氏】 東京女子大学教授。専門は方言学、社会言語学。『例解新国語辞典』(三省堂)編集代表。『揺れる日本語どっち?辞典』『ことばのえじてん』(ともに小学館)監修ほか方言関連の著書も多数 ― 実は読めてない![うろ覚え漢字]【5】 ―
揺れる日本語どっち?辞典

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