腕利きデザイナーが注目する雑誌とは?

腕利きデザイナーが注目する雑誌とは?

川名 潤(Pri Graphics inc.)
『ダ・ヴィンチ』『マンスリーよしもとPLUS』のADのほか単行本装丁多数。

(1)『生活考察』
(2)『TV Bros.』

(1)は辻本力さん編集の「生活」をテーマにしたミニコミ。個人的に気になっているクセのある書き手の人がこぞって書いてるという、僕にとっては奇跡的な雑誌です。「生活」という身近なテーマを扱っているにもかかわらず、向けているマーケットは書き手のクセによりたぶん狭い。こういう、誰かにとって「僕に向けて作られているに違いない」と思わせるような雑誌が細々とでも残っていける出版界になるといいなあ。同じ理由で『TV Bros.』も。

木庭貴信(オクターヴ)
『クイック・ジャパン』のADを務めるほか、単行本の装丁も多数。

(1)『溺死ジャーナル』
(2)『TRASH-UP!!』
(3)『デザインのひきだし』

(1)は大阪出身の特殊サラリーマン松本亀吉氏が発行するミニコミ誌。亀吉氏による悪態の波状攻撃と破綻した誌面デザインは、大方の読者を混乱させるであろう。ただし、亀吉氏本人は妻と猫を愛する紳士。豊田道倫氏、雨宮まみ氏ら、毎号の豪華執筆陣も魅力である。(2)は「さまざまなトラッシュ・カルチャーを追求していく雑誌」。音楽・マンガなどジャンルは問わないが、映画情報が異常に充実。ホラー、猟奇系のA級からZ級作品を広く紹介。その道が好きな方にはたまらない内容です。第3号のダリオ・アルジェント特集は圧巻でした。(3)は、すべてのデザイナー必携の雑誌。紙、印刷、製本、加工の極限を知るため、地道に現場を取材し、自らの雑誌を実験台として実例を紹介する。毎号毎号、趣向をこらした造本は、もはや雑誌というより作品である。造本にお金がかかりすぎて、増刷ができないとか。

原条令子(原条令子デザイン室)
『散歩の達人』『別冊住まいの設計 relife+』『iA』のADのほか単行本の装丁も

(1)『装苑』

 ある雑誌がきっかけとなり、その雰囲気が広がって似たような雑誌が増え、それが「普通」となっていくことは、それはそれで素晴らしいことであるけれど、もう少し奇抜なものが「普通」になってよいのではないかと思っています。無難に「普通」を目指す雑誌がたくさん見られる中で、『装苑』はメジャー雑誌であるにもかかわらず、編集的にもデザイン的にも面白い切り口の誌面で、制作者も楽しんで作っている雑誌だと思っています。小さな部分にも、少しでも新しい試みをしようとする心意気が見え隠れし、ずっと変わらずその姿勢を続けていってほしいと願う雑誌です。

細山田光宣(細山田デザイン事務所)
『ESSE』『山と溪谷』『edu』などのADを務めるほか、単行本の装丁も多数。

(1)『野宿野郎』
(2)『雲のうえ』
(3)『LIBERTINES』

 雑誌はやっぱりミニコミが原点なんだと思います。そういう意味で『野宿野郎』は潔くていい! 昔みたいにガリ版やコピーを駆使して作っているわけではないと思うけど、デジタル色をいっさい感じさせないのはステキです。北九州市が出している『雲のうえ』も、毎回頭が下がります。そういう意味で『LIBERTINES』もミニコミ感を忘れていないのが正しいと思うのです。

取材・文/石島律子 漆原直行 新保信長

― この雑誌がすごい! ベスト30【7】 ―




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