枡野浩一『どこかに行くと偶然出会える――そんな雑誌に面白さを感じる』

どこかに行くと偶然出会える――そんな雑誌に面白さを感じる
選者:枡野浩一

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’68年生まれ。歌人。著書『ショートソング』『僕は運動おんち』『結婚失格』ほか。
心に残る雑誌は『宝島30』、自身も関わったミニコミ『BD』


今の私が面白いと思う雑誌のイメージは、「どこかに行くと偶然出会える」というものなんです。たとえば『R25』が出たばかりの頃って、そういう感じで面白かった。でも、なんかだんだんネットとかのせいで新鮮味がなくなっちゃって残念なんですけど、『FILT』はいまだにたまに出会えると、持って帰って人に見せたくなる感じがある。企業のPR誌なんだけど、結構豪華な人たちが出てて、特集のクオリティも高いんですよ。「寄り道」みたいな何でもないテーマの特集があって、それについてみんなが語る、みたいな作りもほどよくて。フリーペーパーでは、吉祥寺のブックス・ルーエの『ルーエの伝言』も、手作り感と「わざわざそこに行かなきゃ出会えない」というところが面白いですね。

『Crazy Yang』は、元SPA!編集長のツルシカズヒコさんと奥さんのワタナベ・コウさんが作ってる”ご夫婦雑誌”。だから、大変個人的なんですけど、そこがいい。全然タイムリーじゃない映画や雑誌や街の特集があったり、夫婦喧嘩がそのまま出てきたり。広告なしで流通も特殊だから、以前は1500円だったのが今は3000円になっちゃったんですけど、それでも夫婦でバイトしてまで作ってるというような、そういうお金の問題も含めて気になります。

 書店で普通に売ってる雑誌だと、『TV Bros.』とか。TV雑誌のふりをしたコラム誌(笑)。個々のコラムは号によって当たり外れありますが、全体としてどれかしら面白いのはあるという。ほかにもわりといろんな雑誌見ますけど、ピンポイントで「この雑誌のこのコーナーだけは見なきゃ」というのはありますね。最近愛読してるのは『本の旅人』の森達也さんの連載。それを読みたいがために本屋さんに行くと探してしまう。自分もそういうものが書けたらいいなと思います。

 あと、全然興味ないのに見ちゃうのが『Number』。写真とデザインがいいというのもあるけど、自分と全然違う人の顔が見たくなるんです。で、アスリートの発言を読んで思考回路の違いにいちいち驚く、みたいな。なんか異世界を覗く感じ? そういう意味では、オラオラ系やアゲハ系雑誌とかも面白いです。(談)

『FILT』

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発行/コネスール、編集/マガジンハウス、アルタイル。
JTの無料PR誌だが、PR臭は極めて薄い。たばこ屋、カフェなどで入手可

『Crazy Yang』

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発行/ハッピーコーイング。「定期購読だと急に安くなる。
基本的に定期会員向けの雑誌」(枡野氏)。吉祥寺の雑貨店「四月」で入手可

『本の旅人』

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発行/角川書店。月刊のPR誌。「榎本俊二さんや大島弓子さんのマンガも載ってて、
出版社のPR誌のなかでは読み応えありますね」

『Number』

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発行/文藝春秋。’80年創刊のスポーツノンフィクション誌。
「たぶん『Number』読者で私ほどスポーツ嫌いな人、いないと思います」

― この雑誌がすごい! ベスト30【6】 ―




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