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経済が縮小するなか、”発想の転換”から生まれた「ダウンシフター」

経済が縮小するなか、”発想の転換”から生まれた「ダウンシフター」

ダウンシフターというのは、現実逃避でもない、ベンチャー起業とも違う。余裕があってセミリタイアする人々とも違う。これまでの生き方とは別の、新しい流れです。

日本は今、経済も低成長がつづき、少子高齢化が進む成熟社会の末期にあります。なおかつ、リーマンショック後の厳しい経済状況下、大企業のリストラも盛んで、終身雇用も年功序列も崩壊している。20世紀型の幸せや豊かさの価値観から本能的に逃れようとする動きがあります。

 経済がどんどん縮小していく現在、大きなシステムの中で生きていくには、そのシステムや他者に自分を合わせていかなければならない。そして、他者と競争して勝ち続けていかなければなりません。

 そんななかで、「儲けすぎない」「消費しすぎない」「競争しすぎない」「働きすぎない」という、これまでとは別の価値観を持ったダウンシフターたちが出てきました。彼らの多くは、収入は減っても、余暇や自分のやりたい仕事を優先します。そして、出世や社会的地位などというものには関心を持っていません。

 収入ではなく、自由な時間や人間関係、精神の充実といった別の面で「リッチ」な生活を送っているのです。これは、これまでの経済成長期にはあまり見られなかった価値観でした。

 今の学生のほとんどは、マスコミ報道やサークルの先輩から厳しい就職戦線の情報が入ってくるので、卒業後の進路選択は大企業志向で、どうしても保守的にならざるをえない面があります。しかし、その学生たちの3~4割が、正社員ではなく派遣社員やフリーターなどにならざるをえない状況が続いています。

 大企業に勤めて1000万円以上の年収を得るというのも難しい時代になってきました。人間にとって、収入というのは重要な要素ではなくて、むしろ年収300万円前後でも他人と競うことなく幸せに生きていける方法があるんだ、ということをダウンシフターたちは教えてくれます。

 もちろん、その選択はハイリスクではあります。それでもなぜ、安定した職業を捨ててまで彼らがダウンシフトしていくのかということに私は注目しています。

 今後、システムから続々と自発的に降りだしたダウンシフターたちが、新しい社会をつくっていくかもしれない。21世紀型の幸せへの”発想転換”という意味で、ひとつの実践なんだと思いますね。(談)

湯本浩之氏

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立教大学文学部特任准教授、NPO法人「開発教育協会」(DEAR)副代表理事。大学では必修授業「職業と純文学」で、学生たちにダウンシフターを紹介

取材・文・撮影/荒川 龍
― [競わない生き方]のススメ【6】 ―




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