飯田哲也氏が「第三極」のリーダー争いに参戦!?
ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
その一言に、橋下徹大阪市長への秘めたる対抗心が垣間見えた。7月29日に投開票された山口県知事選で、自公推薦の山本繁太郎氏に約6万7000票にまで迫る善戦をした「環境エネルギー政策研究所」所長の飯田哲也氏が、音楽家の坂本龍一氏との対談でこんな言葉を発したのだ。
「現代の『明治維新』である“21世紀維新”を山口から実現していきたい。『維新』と言うと、別の人(橋下市長)が出てきますが」
間髪入れずに支持者から「『維新』という言葉をぜひ(橋下市長から)奪い取って欲しい」とのエールが送られると、飯田氏はこう応えた。
「山口から本当の民主主義を始めていきたい」「知事でなくてもできることは山のようにある。新しい山口を作る市民ネットワークを立ち上げる」
落選しても飯田氏が意気盛んなのは、自民党陣営からも「大健闘」と高く評価されているためだ。
「地元選出の衆参国会議員6人中5人が自民党、県議会でも自公が3分の2を占める山口県知事選では、自民系候補が約35万票を獲得して圧勝してきましたが、今回、山本氏は10万票も減らし、飯田氏は大善戦した。組織がない候補者にしては驚異的なことです」(地元記者)。
山口県徳山市中須(現・周南市)生まれの飯田氏が故郷を後にしたのは18歳の時。京都大学と大学院で原子力工学を学び、神戸製鋼に就職して原発関連の仕事をしていたが、原子力ムラのいい加減さを目の当たりにして退職。北欧に留学し、再生可能エネルギーの普及・拡大を目の当たりにしたことが転機となった。
帰国後、このエネルギーシフトの原動力となった電力買い取り制度導入を目指すが、12年前、経産省や電力業界の抵抗で阻まれた。それ以降、自ら名づけた「原子力ムラ」との闘いを続け、3.11以降は原発問題の論客としてメデイアの登場回数が急増。1月からは橋下徹市長のブレーンとして大飯原発再稼働問題などに取り組んだ。
だが「再稼働なしでも今夏を乗り切れる」という試算を大阪府市エネルギー戦略会議で出したというのに、橋下市長は突然再稼働容認に転じ、敗北宣言もしてしまった。
飯田氏とともに再稼働問題に取り組んだ元経産官僚の古賀茂明氏はこう振り返る。
「橋下市長から『明日、再稼働容認発言をします』とは僕らは聞いていなかった。それでみんな、ガクッと来た」
「橋下市長に裏切られて県知事選に出た」という説が流れたのはこのためだが、これを否定しながらも飯田氏は「橋下市長は(再稼働反対で)突っ張りきったほうが脱原発派の支持を得られたのではないか」と悔しさを滲ませていた。
「大阪維新の会」代表の橋下市長が白旗を上げたので、維新の本家本元である長州人の飯田氏が県知事選に出馬、脱原発を掲げた第三極の集票力を野田政権に見せつける――これが「維新のDNA」「山口から日本を変える」というキャッチフレーズを掲げた飯田氏の、最大の狙いだったのではないか。今後、飯田氏が第三極のニューリーダーとして頭角を現していく可能性は十分にあるだろう。 <取材・文・撮影/横田 一>
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