「外国では米軍の検疫を行う権限が保障されている」と国会で批判
集団感染が起きて、感染の震源地となった可能性の高い米軍基地「キャンプ・ハンセン」(沖縄県金武町)
新型コロナウィルス第六波(オミクロン株の感染拡大)は、日本の水際対策の“大穴”となっているものの一つに、不平等な「日米地位協定」があることを可視化した。
集団感染が起きた米軍基地「キャンプ・ハンセン」(沖縄県金武町)を抱える沖縄県に続いて「米軍岩国基地」(山口県岩国市)と隣接する広島県で感染拡大したことから、米軍基地由来である可能性は極めて高い。その元凶が、検疫なしでの入国を可能とする「日米地位協定」にあるのではないかとの批判が上がっている。共産党の志位和夫委員長が今年1月20日、通常国会の代表質問で地位協定の改正を求めたのはこのためだ。
「昨年12月、沖縄県・玉城デニー知事が総理あての要請書で、米軍の入国停止、基地からの外出禁止を、米側に求めるよう要求していたにもかかわらず、対応を怠ってきた責任はきわめて重大です。厳しい反省に立ち、知事の要請にこたえるべきではありませんか。
この問題の根本には、米軍に治外法権的な特権を保障している日米地位協定があります。ドイツでもオーストラリアでも韓国でも、受け入れ国側が検疫を行う権限が保障されています。
ところが日本だけは、検疫は米軍まかせで、日本政府は何らの関与もできません。総理、これで独立国と言えますか。日米地位協定の抜本改正に踏み切るべきではありませんか」(志位委員長)
しかし岸田首相は、日米地位協定が他国と比べ「特別な扱いとの指摘はあたらない」と反論、改定を否定。これに対して、立憲民主党も米軍基地由来が疑われる第六波の感染拡大にいち早く注目、米国にモノを言わない政府を批判していた。
「日米地位協定」の改定を否定する岸田首相
また、キャンプハンセンでオミクロン株集団感染が確認された翌日の12月18日、沖縄県の地元紙2紙は米軍基地関係者が繁華街に繰り出す写真を掲載。
「それでもマスクなし『禁止されてない』…クラスター発表の夜、街を歩く米兵たち」(『琉球新報』)、
「基地周辺の社交街人出 感染対策徹底求める声」(『沖縄タイムス』)と報じた。
この報道に素早く反応したのが、立憲民主党の沖縄県連大会出席と対話集会開催を兼ねて沖縄入りをしていた小川淳也政調会長。那覇市内での対話集会で次のように訴えたのだ。
「彼ら(米軍基地関係者)はワクチンを接種しているのか。その後の外出制限を含めた行動制限はどうなっているのか」「日本政府としてアメリカと時折厳しい姿勢できちんと交渉することを求めていきたい」
集団感染を起こした米軍基地から、マスクなしの関係者が自由に出入り
キャンプ・ハンセン前の繁華街「新開地」には飲み歩く米軍関係者たちの姿が
映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」の続編「香川一区」が評判の小川氏に注目し、追っかけ取材をしていた筆者は対話集会後、金武町のキャンプ・ハンセンにも足を運んだ。すると、信じられない光景が目の前に広がっていた。
目の前の繁華街に、マスクなしで外出する米軍関係者たち
米軍関係者もその車も入口のゲートを自由に出入りし、基地の目の前にある繁華街「新開地」にはマスクなしで繰り出す人もいたのだ。大音量の音楽が漏れ聞こえる繁華街を歩きながら店を覗いていくと、グラスを傾ける米兵たちが座っている。
新開地の繁華街内の公園では、バンド演奏も行われていた
繁華街内の公園では、ロックバンドのライブが行われていて、演奏に合わせてダンスをする家族連れで賑わっていた。女性の接待を伴う店も盛況で、「集団感染など無関係」と言わんばかりのどんちゃん騒ぎが行われていた。
「水際対策の強化」を訴えながら、米軍由来の感染拡大の“抜け穴(大穴)”をふさごうとはしない岸田首相の言行不一致ぶりを実感した。日米地位協定の特権により、来日する米軍関係者には国内法が適用されず、空港での検疫も外出制限も免れることができる。基地内の集団感染で日本人従業員に感染が確認されても、米兵らには行動制限がかかることはなかったのだ。
岸田政権が米国に軽んじられていることも実感した。松野博一官房長官は12月19日に沖縄を訪れて「今後も米国に対し感染拡大の防止措置を徹底するように求めていく」と述べたが、実効性は皆無に等しかった。
マスクなしで店員と会話
筆者が12月24日と25日に金武町を再訪すると、キャンプハンセン前の繁華街での賑わいに大差はなかった。マスクなしで買物に出かけていた二人組が基地前で信号待ちをしていたかと思えば、バーベキュー店の前ではマスクなしの客が店員と会話をしていた。
クリスマスを祝う花火が打ち上げられ、マスクなしの見物客が並んでいた。店内の盛況ぶりも同様だ。感染震源地の実態を記録しておこうと、動画撮影も可能なミラーレス小型デジカメで隠し撮りをしていると、「ヘイ! ヘイ!」と大声を出して店員が追いかけてきた。
肩をつかまれることもあった。「許可なく撮影してはダメ、画像を消しなさい」と片言の日本語で要求されたが、動画撮影前に撮った別の写真を示してようやく解放された。
ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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