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安倍元首相は亡くなった後も日本の政治に影響力を残している

問いかけに答えてもらえないまま、安倍元首相は亡くなってしまった

増上寺(東京都港区)に設けられた、安倍元首相の献花台

増上寺(東京都港区)に設けられた、安倍元首相の献花台

 安倍晋三元首相銃撃事件から4日後の7月12日、葬儀会場となった増上寺には献花台が設けられ、花束を持った人々が長い列を作っていた。献花台の前には、ワイシャツ姿で微笑む安倍元首相の写真。筆者には「問いかけに答えてもらえないまま亡くなってしまった」との思いが沸き上がって来た。  第二次安倍政権が誕生した2012年12月以降、筆者は何度も安倍元首相を直撃、声掛け質問を繰り返してきた。首相辞任後もなお自民党最大派閥のトップとして岸田政権にも大きな影響力を及ぼし続け、“影の総理大臣”のような存在として君臨し続けていると捉えていたからだ。  同じような見方をしていたのが、森友・加計・桜を見る会など安倍氏批判の急先鋒だった元検事の郷原信郎弁護士。7月9日のブログでは「私にとって、言論で戦い続けてきた最大の権力者が安倍氏」と振り返り、こう続けていた。 「今は、政権の座から離れていますが、いずれまた政権に復帰してくる可能性もあり、今後も、私の『権力との戦い』の相手だと思っていました。まだまだ批判し、戦い続けたかった。それだけに、私にとっても、安倍氏の突然の死去は衝撃であり、言いようのない喪失感を味わっています」

大多数の日本人にとっては、円安より円高のほうがプラス

安倍元首相 参院選の一大争点となった物価高について、立憲民主党は「岸田インフレ」と批判していた。これは同党の小西洋之参院議員が5月30日の予算委員会で使い始めたものだ。「現在の物価高騰はアベノミクスインフレだ」と切り出し、これを続ければ「岸田インフレ」になると指摘していた。 「(物価高は)もちろんエネルギー問題もあるが、輸入物価全体で三分の一は円安の影響だと岸田総理も認めているわけだから、(金融緩和推進を掲げる)『政府・日銀の共同声明』を見直す気がないのであれば、異次元の物価高騰は『岸田インフレ』と言うべき失策ではないか」  実は、円安誘導のアベノミクスが物価高を招く弊害は、第二次安倍政権が誕生した当時から問題視されていた。『デフレの正体』『里山資本主義』の著者であるエコノミストの藻谷浩介氏は2012年12月4日の『日刊ゲンダイ』の記事で「(安倍氏の経済政策は)善意で日本経済を壊す危険がある」と、次のように警告を発していたのだ。 「お隣の韓国では、ウォン安で原油購入代がかさんでガソリン代などが値上がりし、国民の不満が高まっています」 「円安になれば燃料輸入額は増え、ガソリンや灯油も値上がりします。円高、円安にはそれぞれメリットデメリットがある。目下の日本では円高の方が大多数の日本国民にとってプラスです」  この記事のコピーを再登板直前の安倍元首相に手渡したのが、筆者にとって初めての直撃だった。2012年12月の総選挙で街宣を終えた時のことだ。安倍首相(当時)は異次元金融緩和に邁進、円安と株高で大企業と富裕層は儲かったが、庶民は物価高に苦しむ事態に陥ることになったのだ。
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アベノミクスが庶民を苦しめているのではないか
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ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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