人気のシェアハウス、マルチ商法の巣窟になることも
近年、シェアハウスが人気だ。シェアハウス情報サイト「ルームメイト・カフェ」代表の石川智也氏は「一昔前の『お金がないからとりあえずシェア』という認識ではなく、一つのライフスタイルとして確立している」と話す。
「今は『ドミトリー(相部屋)』が減少して、個室と共用スペースがある物件が増えています。呼び名も『ソーシャルアパートメント』などさまざまで、なかには新築で造るなど、豪華な物件も多い」
ただ、人気が高まるにつれ、トラブルも発生。都内のシェアハウスオーナーは、「最近は若い入居希望者が多く、なかにはノリで来る人もいて、管理が行き届かず住人間で問題が起こることもある」と話す。昨今のシェアハウスで巻き起こる、トラブルの実態を追った。
【CASE1】 “繫がり”ゆえの落とし穴。ハウスがマルチ商法の巣窟に
「3か月ほど前に新しい住人が入ってきて、それからウチのシェアハウスはおかしくなりました」と話すのは、1年半前から都内のシェアハウスに住む会社員の斉藤孝明さん(仮名・27歳)だ。「新しい友達が欲しかった」という彼は、ネットで物件情報を探してシェアハウス暮らしを始めた。引っ越したのは、3階建て一軒家を改築した個室8つとリビングがある物件。
「プライベート空間はあるし、気が向けばリビングでシェアメイトたちと酒を飲んだりもできる。適度な“繋がり”が気に入りました」
だが、そんな気ままなシェアハウス暮らしが一変する。
「3か月ほど前、新しく入ってきた住人に誘われて、シェアメイト数人とホームパーティに参加したんです。会場は高級マンションの一室。全部で十数人いました。飲んで気分もよくなった頃、急に『では商品説明をします』と……」
実は、彼らが参加したのはマルチ商法の会員募集パーティだった。
「『あなたも今すぐ始めましょう』と何度も勧誘されたけど、その場はなんとか断りました。帰り道、僕以外の誘われた友人も『あんなのやらないよな』と笑っていたので安心していたんですが……」
後日、その友人宛にマルチ商法の会社から商品が届いたという。
「まさかと思いました。しかもそれだけで終わらず、その後、芋づる式にほかのシェアメイトたちも入会しだしたんです。次々に別の人宛に郵便物が届いて『あ、コイツも入ったのか……』と」
閉ざされた空間であることが災いし、勧誘は伝染病のように蔓延。気づけば入会していない彼が“少数派”になった。毎晩のように入会したシェアメイトたちがリビングに集まり、謎の書類を広げて「あの友達なら入るかも」などと“会議”を繰り広げているという。
「今ではシェアハウス内が、マルチ商法の商品だらけになっています。シェアメイトたちと話すたびに、『コレも勧誘なんじゃないか?』と疑うようになりました。会話自体も減ってきて……。正直、たまに『やったほうが楽しいのかな?』と思ってしまう自分がいます」
斉藤さんが孤独に負けないことを祈るばかりだ。
― 魔窟化するシェアハウスの(狂)ライフ【1】 ―
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